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「学法石川が遅れています!」NHK実況も困惑…2015年の学法石川“奇跡の世代”優勝候補だった都大路で起きたこと「箱根より報道陣が多かった」
posted2024/01/20 17:01
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph by
JIJI PRESS
100回目の箱根駅伝が青山学院大の優勝で終わり、1月21日の都道府県対抗男子駅伝で今季も駅伝シーズンが幕を閉じようとしている。そんな中、多くのランナーの出身校として耳にした高校のひとつに福島・学法石川高校がある。
駅伝ファンには「ガクセキ」の愛称で親しまれる同校だが、かつて自他ともに認める“黄金世代”があった。今から9年前の2015年。後の日本王者を3人、箱根路で区間新記録を出した選手2人を擁し、全国的にも注目を集めていた当時の同校。だが、ついに駅伝では日本の頂点に立つことはなかった。あの時、「黄金世代」のガクセキに起こっていた“綻び”とは――?(全3回の第2回/第3回へ続く)
2015年、福島ではちょっとした“ガクセキ”フィーバーが起こっていた。
「本当に毎日と言っていいぐらい取材が来ていました。箱根駅伝の前よりも多かったと思います。陸上をやってきたなかで一番多かったですね。10月、11月、12月はほぼ毎日誰かがいて、走っているところをカメラに撮られているような感じでした。夕方のニュース番組でも何週間にも渡って特集を組まれていました」
当時1年生だった半澤黎斗は当時をこう振り返る。
半澤はのちにインターハイの1500mで優勝し、早稲田大学に進学してからは注目選手のひとりにもなった。箱根に対する世間の熱狂ぶりは説明するまでもない。それだけに「箱根前より報道の数が多い」と言うのは、なかなか信じがたい事実だ。
「テレビ局が8社、新聞社が20社」の事前取材
当時3年生の田母神一喜は、こう証言する。
「最後の調整練習の取材の数がすごかった。テレビ局が8社、新聞社が20社とかだったと思うんですけど。県内外からこれほどの数が集まってくださって、こんなに注目されているんだなって実感しました」
ただ、それも無理からぬことだった。
この年の7月にコロンビアで開催された世界ユース選手権に田母神と遠藤日向が日本代表として出場。田母神は800mで7位、遠藤は3000mで5位と世界の舞台で入賞を果たしたのだ。さらに、帰国して数日と空けずにインターハイに臨み、田母神は1500m優勝、800m3位、遠藤は5000mで日本人トップの3位に入っている。
また、インターハイでは、主将の阿部弘輝も5000mで決勝に駒を進め(※転倒もあり決勝は最下位)、真船恭輔と小松力歩は3000m障害で全国まで進み、真船は決勝にも残った。