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「(日ハム・ドラ1)予想外でしたね」逸材がまさかの“外れ外れ1位”なぜ? 全12球団ドラフト指名“ガチ評価”…谷繁元信はどう見た?《パ・リーグ編》
text by
谷繁元信Motonobu Tanishige
photograph byJIJI PRESS
posted2023/11/03 11:05
日本ハムが交渉権を獲得し、仲間に祝福される細野晴希(東洋大)。大学生最速158km左腕として注目が集まっていた
【5】西武「“らしい”指名」
西武は3球団競合、1番人気の武内夏暉投手(国学院大)を引き当てましたから、これがまず大きかった。先発陣には高橋光成、今井達也、平良海馬がいて、一昨年のドラフト1位の隅田知一郎もいる。そこに武内が入ってくれれば、松本航も含めて少なくとも5枚は確定できる。間違いなく先発の1枚として考えているでしょうから、層を厚くするという意味でいいドラフトになったんじゃないでしょうか。
2位の上田大河投手(大阪商業大)は、平良が先発にいって、抑えの増田達至も少しくたびれてきているので、その穴を埋める人材というイメージを抱いています。大学日本代表では抑えもやっていましたからね。大学ナンバーワンの投手に次いで、チームの課題にハマりそうな投手。これも適材適所のいい指名だったと思います。
3位の杉山遥希投手(横浜)と4位の成田晴風投手(弘前工)は将来的な先発候補の高校生、さらに5位の宮沢太成投手(四国IL徳島)や7位の糸川亮太(ENEOS)といったリリーフ候補も含めて6人も投手を指名したなかで、1人だけ野手がいるのが目を引きます。6位の村田怜音選手(皇學館大)は、196cmで110kgですか。なんとなく西武っぽいというか、やっぱりこういうロマンのある選手が好きなんだな、と(笑)。おかわりくん(中村剛也)や山川穂高、そして渡部健人の系譜に連なる、右のスラッガー候補でしょう。
大卒ですから何年も余裕はないかもしれませんが、一発の楽しみはありますね。この村田選手とソフトバンクに入った廣瀬選手の2人は、右の長距離砲として来年ちょっと気にして見ていきたいですね。いきなり試合に出て打つようだと、面白い存在になるかもしれません。
【6】日本ハム「まさかの“外れ外れ1位”」
予想外だったのは、細野晴希投手(東洋大)が抽選を2度外した後のタイミングでの指名になったこと。理由としては、やはりコントロールだと思います。定まるときと、そうでないときの差が激しい。前評判が高かっただけに、1位とはいえ彼もたぶん悔しかったと思うんですよ。最初に名前を呼ばれるだろうと考えていたのに、呼ばれなかったわけですから。
もちろん、左で158キロを投げられるポテンシャルは間違いなく一級品です。何が原因だったのかを自分でも考えるでしょうし、日本ハムでいい指導者に巡り合って制球力さえ修正されれば、まったく問題ありません。他球団に「うわ、やっぱり細野にいっておけばよかった……」と思わせるくらい頑張ってほしいですね。
日本ハムは1位以外、全員が野手なんですよね。育成でも1人だけですか。投手陣がそんなにいいイメージはないというか、加藤貴之がFA、上沢直之がポスティングでメジャーにという状況なので、1枚でも多いほうがいいだろうとは思うんですが……。チームとして「いまの投手陣で来年、再来年は戦えるように」という判断をしたのかもしれません。そう考えるとなおさら、細野投手には1年目からローテーションに入ってほしいはずです。
そんななか、大学ナンバーワンのキャッチャーである進藤勇也選手(上武大)を指名できたのは大きかった。折り返しの2位で彼を獲るのは戦略通りだったと思います。映像でプレーを見ましたが、肩も強いし動きも俊敏。182cm、90kgと身体も大きい。日本ハムはキャッチャーが決まっていないので、早いタイミングで絶対にチャンスは訪れると思います。そのチャンスを掴むことをできれば、一気にレギュラーになってもおかしくないですね。
(構成:NumberWeb編集部)
<後編「ドラフト総論」に続く>