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相手投手も「想定外のバッティングが一番、怖い」“作られた感じがない”天然モノの六大学No.1スラッガーに注目 2023年ドラフト目玉候補《内野手ベスト3》
posted2023/10/23 11:02
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
JIJI PRESS
今年の「内野手」は、ドラフトで注目すべき選手はそれほど多くないものの、それぞれに異なった強烈な個性の持ち主が揃っている。
内野手というカテゴリーだが、あえて「バットマン」から挙げよう。
内野手編【1】慶応大・廣瀬隆太(182cm91kg・右投右打)
昨年12月、暮れの松山・坊っちゃんスタジアムでの「出来事」が忘れられない。侍ジャパン大学日本代表チームの選考合宿。つまり、メンバーを選ぶオーディションだ。
全国の大学リーグから推薦された50名ほどの候補選手たちが、紅白戦でその「実戦力」を試されていた。
すると、平成国際大の155キロ右腕・冨士隼斗投手(4年・181cm85kg・右投右打・大宮東高)の「150キロ超」の速球を、広い、広い坊っちゃんスタジアムの左中間最深部のそれも最上段に、なんとライナー性の弾丸軌道でぶち込んだ打者がいた。
慶應義塾大・廣瀬隆太内野手(182cm91kg・右投右打・慶應高)。
「とにかく速いんで、まっすぐ一本待ちのワン、ツー!ですよ……はい、出合い頭ですね」
あとから聞いたらこんな感じでサラッと返されたが、出合い頭でもなんでも140mも先の外野スタンドの、それも一番深い所にあの弾道で叩き込めるヤツなんて、メジャーリーガーしかいないのでは。無人の外野スタンドの座席に打球が衝突する「バコーン!」って音が、ネット裏まで聞こえてきたものだ。
決して整った打ち方をする打者じゃない。逆にいうと、誰かに「こう打ちなさいと教わって打ってます」みたいな、人工的な作られた感じがしない。
最近では、珍しいタイプの打者だが、考えてみると過去にプロ野球で活躍した「長距離砲」は、独特なスイングスタイルの選手が多かった。
「インパクトまで最短距離とかよくいいますけど、僕は大きく振りたい。遠心力打法っていうんですかね」
バットヘッドで大きな円弧を描いて、その大きな渦の中にボールを巻き込み、雄大な放物線でスタンドに放り込む。