上田西高のグラウンドに伺った時のこと。

　試合形式の練習で、三遊間深い位置のゴロをバックハンドで捕球し、動いた勢いで体勢を崩しながら投げた一塁送球が、白い糸を引いてファーストミットにダイレクトに届いたから驚いた。「いつものプレーです」と監督さんから聞いて、もっと驚いた。

　そのグラウンドのライトフェンス後方は、信州・千曲川の広い河川敷になっていて、その河川敷に向かってライナーが、大放物線が、フェンスをガンガン超えていく。

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　腕っぷしも強いのだろうが、それ以上にインパクトの瞬間の全身の瞬発力を強く感じるバッティング。正面に飛んできた打球に、野手が思わず体を逃がしている。身の危険を感じているからだ。

　一昨年の秋、長野県大会で見た172cm62kgのミートが器用ですばしっこいプレーの遊撃手が、2年間の練習の積み重ねで、まるで別人の「横山聖哉」に変身していた。

「モノが違います！ 今年は大学のピッチャー、いくらでもいますけど、彼らを我慢してでも1位でいってもいいくらいの選手ですよ！」

　力こぶを握らんばかりのスカウトもいる。

　仮に2巡目に残っていたとしても、あっという間にいなくなるショートストップだろう。

内野手編【3】皇学館大・村田怜音（196cm110kg・右投右打）

　予定では、3人目にあの「佐々木麟太郎」を推して締めるつもりだったのが、アメリカへ留学と知らされて急遽、方向転換だ。

　ならば、私の隠し玉でいこう。

「伊勢のガリバー」とは、私が勝手に命名させていただいたのだが、皇學館大・村田怜音内野手（196cm110kg・右投右打・相可高）という選手は、ほかに表現のしようがない。

ドラフト目玉ベスト3　内野手編【3】皇學館大・村田怜音（196cm110kg・右投右打）　チーム提供

　そもそもは、神主さんを養成するために設けられた皇學館大。まさに、伊勢神宮の森の中のこの大学から、とんでもない大器が現れた。

　目の前に立たれたら、向こう側が見えない。日本人選手でこれだけ雄大なサイズがあると、普通なら、動けない、走れない……となるが、村田怜音の場合は、動けるし、走れる。まず、そこに驚く。

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