甲子園の風BACK NUMBER
慶応優勝の一方で、早稲田実業は今夏コールド負け…全員“丸刈り”の早実、慶応はオール4でも推薦入学できず、高校野球の「早慶」を比較してみた
posted2023/09/01 11:02
text by
内田勝治Katsuharu Uchida
photograph by
Hideki Sugiyama(L)/Naoya Sanuki(R)
2023年夏。甲子園は慶応高校(神奈川)の107年ぶりの全国制覇で幕を閉じた。聖地は相手チームの声援がかき消されるほど「若き血」の大合唱が地鳴りのごとく轟き、仙台育英(宮城)の夏連覇を阻んだ。あらためて「KEIO」の底力を垣間見た瞬間だった。
2017年夏以降、甲子園から遠ざかっている早実
優勝のマウンドに立っていた慶応2年生エースの小宅雅己が生まれた2006年の夏、甲子園の主役は間違いなく「WASEDA」だった。早稲田実業(西東京)が、田中将大率いる駒大苫小牧(南北海道)との決勝再試合を制し、悲願の初優勝。聖地を揺らした「紺碧の空」は、駒大苫小牧の夏3連覇の障壁となり、エース斎藤佑樹の「ハンカチ王子」フィーバーは社会現象にまでなった。
あれから17年。直近では慶応は今年を除くと2018年春夏の甲子園に出場し、早実は2017年センバツを最後に聖地からは遠ざかっている。この5年で両校にどのような差があったのか。まずは両校の戦績を2018年秋から辿ってみたい。
2018年秋~2023年夏までの戦績
2018年秋
早実 東京都大会4強
慶応 神奈川県大会4強
2019年夏
早実 西東京大会8強
慶応 神奈川大会4回戦
この代の主な3年生
早実 伊藤大征、生沼弥真人(ともに早大)
慶応 善波力、廣瀬隆太(ともに慶大)
2019年秋
早実 出場辞退
慶応 神奈川県大会4回戦
2020年夏
早実 西東京大会8強
慶応 神奈川大会5回戦
この代の主な3年生
早実 北村広輝、宇野竜一朗(ともに早大)
慶応 本間颯太朗、水鳥遥貴(ともに慶大)
(2020年夏は新型コロナウイルス禍による代替大会)
2020年秋
早実 東京都大会8強
慶応 神奈川県大会3回戦
2021年夏
早実 西東京大会5回戦
慶応 神奈川大会4強
この代の主な3年生
早実 田和廉、清宮福太郎(ともに早大)
慶応 前田晃宏、坪田大郎(ともに慶大)
2021年秋
早実 東京都大会2回戦
慶応 神奈川県大会3回戦
2022年夏
早実 西東京大会8強
慶応 神奈川大会8強
この代の主な3年生
早実 石島光騎、壽田悠毅(ともに早大)
慶応 広池浩成、谷口航大(ともに慶大)
2022年秋
早実 東京都大会3回戦
慶応 関東大会4強
2023年夏
早実 西東京大会8強
慶応 甲子園優勝
主な3年生
早実 宮本陸、山本蒼空
慶応 延末藍太、渡邊千之亮
清宮弟が入学も全国の舞台が遠い早実
早実は2015年夏、2017年センバツ出場の原動力となった清宮幸太郎(日本ハム)の弟・福太郎(早大)が2019年に入学。高校通算111本塁打を放った兄に続く活躍が期待されたが、強豪の日大三や東海大菅生、国学院久我山などの台頭により、聖地の土を踏むことなく卒業した。二松学舎大付や関東一といった東東京の強豪とも戦わなければならない秋の東京都大会も近年は勝ち上がることができず、センバツ戦線でも苦戦が続いている。
栃木からエースと4番を獲得した慶応
慶応は2018年にエース左腕の生井惇己(慶大―日立製作所)、2年生主砲の廣瀬隆太(慶大)らを擁して春夏連続で甲子園に出場して以降、神奈川の厚い壁を越えることができなかった。ただ、甲子園で躍動した世代に憧れ、県央宇都宮ボーイズで日本一を経験した小宅雅己(2年)、加藤右悟(2年)ら有望な選手が入学。2022年秋に関東大会4強に進出し、今春センバツに出場すると、今夏、小宅はエース、加藤は主軸打者に成長。神奈川大会準決勝で東海大相模、決勝で横浜を倒すと、その勢いのまま甲子園で深紅の大優勝旗をつかんだ。この優勝を機に、慶応を目指す野球少年はさらに増えるだろう。