月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
自由な髪型も話題を呼んだが…甲子園「スポーツ紙報道」に考える“高校野球らしさ”の罠「矛盾があるから盛り上がる。論争も起きやすい」
posted2023/09/01 17:01
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph by
JIJI PRESS
高校野球は「矛盾」があるから盛り上がる。いきなり誤解を招く言い方をさせてもらうと私はそう思っています。だから誰でも語りたくなるし、論争も起きやすいのだろうと。
たとえば酷暑の中でのプレー。夏の甲子園大会初日に故郷のチームが出ていたのでテレビ観戦したのですが、体調不良を訴えて交代する選手が相次いでいてドン引きしました。
こうなると「甲子園ではなく涼しいドーム球場で開催すればいい」という意見も出てくる。暑さ対策としては合理的。でも一方で思うのです。選手たちは「甲子園に出たい」という夢を抱いてずっと練習してきた。私がのんきにうだうだ過ごしているあいだもずーっと。そんな私が本番の夏だけ見て「じゃあドーム球場でやれば?」と言うのは“通りすがりの正論”に思えてしまう。しかしですよ、現実問題として地球沸騰の時代とも言われて暑さは年々深刻です。
東京五輪を招致する際、招致委員会は「五輪が開催される東京の夏は温暖で、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候です」とウソをつきました。でもこんなウソは利権が絡んでいない限りもう通じません。甲子園だって暑い。こんな状態は早く解消したい。一方で選手たちのプレーには惹きつけられている。ほら、モヤモヤとドキドキ、矛盾の結晶です。
施された“暑さ対策”
だったら変わっていくしかない。今大会では暑さ対策として新ルールが導入された。5回終了時に熱中症対策のために10分間の「クーリングタイム」を設けた。
日刊スポーツは大会総括の中で、
《序盤は10分間の休憩後に足をつったり、投手が崩れるシーンが頻発。大会が進むにつれ活用法に慣れ「ありがたい」の声が増えた。足をつる選手は中盤以降、劇的に減った。猛暑の甲子園で一定の効果があったと思いたい。検証は必要だが、来年以降も続けるべきだろう。》
検証とセットのうえで、一定の評価をしていた。