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“あの”山王工業戦は現在の日本代表を予言していた? W杯開幕前に…『SLAM DUNK』で学ぶ「現代バスケットボールの新潮流」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/08/25 11:10
8月25日からいよいよバスケW杯が開幕。映画『THE FIRST SLAM DUNK』とも共通する3つのポイントを抑えて日本代表の予習をしよう
一方の河村はロケットスタートが可能な初速に秀でたタイプだ。しかも、彼はドリブルをしながら相手ゴール前に飛び込んでいくときの姿勢が非常に低い。
『THE FIRST SLAM DUNK』の作中でも、山王工業からゾーンプレスを受けた際、宮城が2人の相手選手の間をすり抜けながら地面すれすれのところをドリブルしていくシーンがある。そんなアニメのようなプレーを実際にして見せるのが河村だ。
ちなみに河村は昨シーズンのBリーグでアシスト王にも輝いている。ドリブルで相手ゴール前に切り込んで、そこからノールックで敵も味方も、そして観客までも驚くようなパスを出せるのだ。
映画と唯一違うのは、富樫も河村もアウトサイドのシュート、つまり3Pシュートを高確率で決められることだ。そこだけはフィクションの世界よりも先に行っているといえるのかもしれない。
◆ポイント3:あの「ゾーンプレス」はW杯の世界でもある
湘北を苦しめる山王工業のゾーンプレス。日本でも高校などでよく見られるのだが、プロの世界では必ずしも多く用いられるわけではない。それでも日本代表はこれを積極的に採用している。ポイント2で触れたように、「高さのミスマッチ」があるからだ。
40分もある試合時間のなかでは、まともに戦っていれば高さのミスマッチを徹底して突かれてしまう。だからこそ、時おりゾーンプレスを混ぜることで、相手の攻撃のリズムを崩そうとするのが今の日本代表の特徴だ。
では、どういうシチュエーションでゾーンプレスをするのか。
もっとも多いのが、自分たちのフリースローが決まったあと。他には、タイムアウト後に相手ボールでスタートするときなどだ。ゾーンプレスはコートに立つ5人全員が連動して仕かける。だからこそ、わかりやすいタイミングで繰り出す必要があるのだ。
◆◆
さて、ここまでを振り返ってみると「ポイント1」の3Pを多用するためには、日本の選手たちは全速力で相手陣内に入って、攻撃をしかける必要がある。そして、「ポイント2」も「ポイント3」もかなりの運動量を必要とする。だからだろう。ホーバスHCは小柄な選手たちが、身体的な特徴を活かしたバスケをするためにこんな目標をかかげる。
「日本は世界で一番走れるチームを目指します」
普段はなかなかバスケットボールを見る機会のない人にとっても、世界で一番走るチームがコートで躍動する姿はわかりやすいし、爽快なものに映るはずだ。『THE FIRST SLAM DUNK』がヒットしたタイミングだからこそ、地元開催のW杯を見てみよう。きっと楽しめるはずだ。
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