核心にシュートを!BACK NUMBER
“あの”山王工業戦は現在の日本代表を予言していた? W杯開幕前に…『SLAM DUNK』で学ぶ「現代バスケットボールの新潮流」
posted2023/08/25 11:10
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Kiichi Matsumoto
いよいよ8月25日からバスケットボールのW杯が開幕する。映画『THE FIRST SLAM DUNK』が大ヒットした年に、このW杯が開催されることだけでもタイミングの良さを感じる。
ただ、それだけではない。
あの映画で沖縄と宮城リョータの関係が克明に描かれたこととタイミングを合わせたかのように、今回のW杯は沖縄で開催されるのだ(※フィリピン、インドネシア、日本の3カ国共催で、日本ラウンドの会場は沖縄にある沖縄アリーナ)。
地元開催だから、試合も仕事帰りでも見やすい時間帯に設定されている(20時10分または21時10分開始)。そこで今回は『THE FIRST SLAM DUNK』を見た人が気軽に楽しめる、日本代表の3つのポイントを紹介する。
バスケに詳しくない人でも、映画とも共通する3つのポイントを抑えればきっと楽しめるはずだ。
◆ポイント1:3P多投のスタイル
作者の井上雄彦先生はやはりすごかった。
そう思わざるを得ないのが、山王工業の河田雅史の描き方である。河田のポジションは、当時で言えば「ゴール下を主戦場」とするセンターだった。ただ、作中で河田はセンターにも関わらず3Pシュートを放つなど、アウトサイドでの器用さも描かれている。
そして、漫画『SLAM DUNK』が描かれてから30年弱が経った現在、そこで描かれたセンター像は、世界のスタンダードになった。
当時のセンターといえば、ゴール下で身体を張るのが仕事だった。だが、現在は違う。今ではセンターのポジションの選手も、アウトサイドからシュートを打つのが当たり前になっているのだ。
日本代表のセンターは帰化選手であるジョシュ・ホーキンソンだが、彼は3Pシュートの名手として知られる。一般的に3Pの成功率は、3本に1本決められれば及第点とされているが、彼は昨シーズンのBリーグで33.6%の成功率をおさめている。
今回日本代表に選ばれた12選手のなかで3Pをほとんど打たないのは”リアル桜木花道”こと赤髪の川真田紘也だけ。他はインサイドのポジションの選手でも、一様にアウトサイドからのシュートを放つ。
例えば、日本代表の唯一のNBA選手である渡邊雄太。彼は昨シーズンのNBAのスリーポイント成功率ランキングで一時は首位に立つほどアウトサイドのシュートを決めてみせる。また『SLAM DUNK』で言えば桜木と同じポジションのパワーフォワードで、日本のBリーグでプレーする井上宗一郎も、シュートフォームの美しさを渡邊が賞賛するほどアウトサイドのシュートを得意としている。