核心にシュートを!BACK NUMBER
“あの”山王工業戦は現在の日本代表を予言していた? W杯開幕前に…『SLAM DUNK』で学ぶ「現代バスケットボールの新潮流」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/08/25 11:10
8月25日からいよいよバスケW杯が開幕。映画『THE FIRST SLAM DUNK』とも共通する3つのポイントを抑えて日本代表の予習をしよう
なお、日本代表のなかでとびぬけた3Pシューターは、左利きの富永啓生。現在はアメリカのネブラスカ大学でプレーしており、将来のNBA入りがうわさされる逸材である。彼の場合は、3Pラインの数メートル手前から難なくシュートを打って、それを決めるので、初めて見た人はびっくりするかもしれない。
◆ポイント2:宮城リョータが「2人」? それを活かす高速バスケ
現在の日本代表には167cmの富樫勇樹(キャプテン)と、172cmの河村という小柄なPG(ポイントガード)が2人もメンバーに入っている。彼ら2人のどちらかが大半の時間でコートに立ち、PGとしてチームの攻撃をけん引する。
アメリカでもプレーした経験のある富樫選手は「自分の身長は世界的に見たら『小さい』のではなくて、『小さすぎる』」と語っている。
良くも悪くも、その言葉に偽りはない。
というのも身長の低い主力選手が2人同時にメンバーに入るのは、世界的に珍しいだけではなく、平均身長が高くない日本のバスケ史のなかでも珍しいことだ。
特に近年は選手の大型化が進んでおり、それは日本代表も無関係ではない。2021年の東京五輪のときは、初戦のスタメンの平均身長が日本の歴史上初めて2mを超えている。
にもかかわらず時代の流れに逆行するかのように、今の日本には宮城リョータのようなタイプのPGが2人もいる。そこに現在の日本代表の「オリジナリティ」がある。
バスケの世界ではしばしば「高さのミスマッチ」と「スピードのミスマッチ」が存在するといわれている。日本代表は170cm前後の選手を2人抱えることで「高さ」で不利になるからこそ、「スピード」で勝負しようとしている。実際、キャプテンの富樫も、河村もスピード面では圧倒的に優れている。
以下に、彼らがどのような場面で輝くのかを紹介しよう。
富樫の場合はやはり、味方にスクリーン(※チームメイトをマークする相手選手の進行方向に入り、壁のような役割をすることでマークをずらすプレー)をかけてもらってから打つ3Pや、相手選手と1on1の局面で小さな間隔を作ってから放つ3Pが武器だ。
富樫は50m走で生きるような速さではなく、「一種の動きの速さ」である敏捷性が優れている。それを生かした結果、彼は2016年に誕生したBリーグで歴代の3P成功数でダントツの記録を誇る。