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川崎フロンターレの“黄金期”は終わったのか? 三笘薫や谷口彰悟のいない“常勝クラブの現在地”「若い選手も新加入選手も、着実に力を…」
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2023/08/05 11:03
3対0で快勝した7月8日の横浜FC戦、ゴールを決めた宮代大聖を祝福する家長昭博と瀬古樹。若手と新戦力の成長により、川崎Fは上昇気流に乗りつつある
鬼木監督も試合後の会見で「落ち着きが必要だった」と嘆いている。大迫勇也のPKによる失点のわずか3分後、再び大迫に2ゴール目も奪われてしまったのは、やはりチームとしてナイーブだったと言わざるを得ないからだ。
「1点を取られたあとの落ち着きは必要なところです。どうやって落ち着かせるかというと、ボールゲームなので自分たちの時間を増やすこと、どこでボールを動かすかが重要。そこで守備でやられたくない気持ちが強くなったのかな、と」
“サイクルの終焉”を問うのはまだ早い
そのためにチームで共有すべき改善点は何なのか。試合後に脇坂が指摘していた課題は“ゲームコントロール力”だった。
「チーム全員でゲームをコントロールするとか、そこはもっともっとこだわっていかないといけない部分。(各選手が)ポジショニングで助ける、というところも、自分たちには必要になってくると思います」
今年の鬼木フロンターレは、他を圧倒し続けるほどの強さを示せるわけでもなければ、爆発的な得点力を誇るわけでもない。むしろ僅差のゲームを勝ち切るチームだ。だからこそ、流れの中で相手の意図を敏感に感じ取り、「いかに試合を進めていくべきなのか」というマネジメントが重要になる。特にリードした展開では、その意思統一の精度をさらに上げなくてはいけない。
ゲームコントロールといえば、14番の前任者である中村憲剛がもっとも得意とした分野でもある。一朝一夕で身につくものではなく、その薫陶を受けた大島僚太が離脱中であるのは悔やまれるが、僅差でも勝ち続けるチームになるためには、継続して向き合わなくてはならない課題だろう。
「もっともっと『普通のチームではない』というところを、自分たちはやっていかなければいけないと思う」
もう一度、突き抜けたチームになるために。クラブの絶頂期を知る脇坂泰斗は、新しい時代を築いていく覚悟を、試合後にそう言葉にしている。
ボールを持てば1人で局面を打開できる三笘薫はいない。中盤でのボールポゼッションを支えながら、瞬く間にボールを奪い返す田中碧や守田英正、旗手怜央もいない。絶望的なカウンターにも涼しい顔で対応してみせる谷口彰悟も、最終ラインにはいない。
それでも、王座への道は決して諦めない。
主力を担うはずだった怪我人も復帰しつつある。彼らが若手や新戦力と融合した状態で、逆転優勝という目標にどこまで迫ることができるのか。“サイクルの終焉”を問うのは、その後でも遅くないはずだ。
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