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川崎フロンターレの“黄金期”は終わったのか? 三笘薫や谷口彰悟のいない“常勝クラブの現在地”「若い選手も新加入選手も、着実に力を…」
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2023/08/05 11:03
3対0で快勝した7月8日の横浜FC戦、ゴールを決めた宮代大聖を祝福する家長昭博と瀬古樹。若手と新戦力の成長により、川崎Fは上昇気流に乗りつつある
継続起用によって成長する“川崎産”の芽
背景にあるのは、クラブとしてのビジョンだ。
今季の鬼木フロンターレの変遷を見ていると、「若手育成」というミッションにトライしながら、既存の戦力で勝ち続けるチーム作りを進めていることがわかる。クラブからのオーダーも踏まえてのことだと思うが、就任7年目を迎えた鬼木監督にとって、過去6年とは違った優勝の目指し方となっている。
実際、新たなタレントは着実に芽吹いてきている。
例えば開幕からFWの軸を担ったのは、鳥栖への期限付き移籍を終えて復帰した宮代大聖と、大卒新人の山田新というU-18時代の“同期コンビ”だ。2大エースであるレアンドロ・ダミアンと小林悠が開幕から離脱していた影響も大きいが、伸び盛りのストライカーたちを継続的に試合に起用することで、自信を備えるようになってきた。
とりわけ内面の変化を感じるのが宮代で、最近はチームの勝敗を背負う自覚を言葉にすることが多くなった。第21節を終えリーグ戦で6得点を記録しているストライカーは、エースと認められるために、ゴールへの貪欲さをさらに増している印象だ。自らの得点で勝利に貢献したある試合後には、こう口にしていた。
「試合に出ている以上は『絶対に自分が決めて勝たせてやろう』っていう思いはあります。今(リーグ戦で)こういう順位にいるっていうのも、自分がもっともっと引っ張っていかないといけない」
そんな宮代に負けじと、山田新も発奮する。両者がゴールを決めた第20節の横浜FC戦後、彼は静かに誓った。
「もっと結果のところも、2人で違いを出していかないといけない。今日は2人ともゴールを取りましたけど、これをきっかけに、もっと2人でフロンターレを良くしていかないといけないと思います」
川崎育ちの生え抜きで成長を示しているのは、前線だけではない。
最終ラインに目をやれば、18歳の高井幸大がセンターバックのレギュラーとして存在感を放っている。192センチの体躯を生かした鉄壁の守備力と足元の技術、何よりそのスケールの大きさから将来を嘱望される俊英だ。新たな時代を作るべく、継続起用によって“川崎産”の芽が着実に伸びてきているのである。