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「マコトはいつも控室でドイツ語の本を読んでいた」長谷部誠の海外1年目を知る大先輩レジェンド、パブロ・ティアムが絶賛する“人間性”
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2023/05/11 11:01
日本代表からは離れるも、在籍するフランクフルトの支柱となっている39歳。長年の活躍につながるルーキー時代の姿勢をレジェンドは見ていた
マコトがヴォルフスブルクに移籍してきた当初の話をするよ
ティアム「マコトはとても勤勉で、目標にまっすぐで、非常に規律正しくて、いつでも礼儀正しい。マコトがヴォルフスブルクに移籍してきた当初の話をするよ。彼はドイツ語の本をいつも手にして、それを控室で読んでいたんだ。それだけではなくて、ドイツ語でうまく発音できない単語をみんなに聞いてまわったりしていたんだ。そんな彼を最初僕らは微笑ましく見ていたんだけど、数カ月もしたらドイツ語を話し始めたんだ。
これはすごいことなんだ。私は数多くの外国から来たチームメイトを知っている。彼らの多くは2年たっても全くドイツ語をしゃべれないなんてことは普通にあった。マコトは本当に素晴らしい性格で、本当に素晴らしい人間だよ」
試合後にはドイツ語でメディア対応
いまだからこそ、「ドイツに長くいることになるからドイツ語はやっておいた方がいいよ」と言えるかもしれないが、渡独したばかりのころからそうした姿勢で取り組んでいたことは特筆に値する。海外への移籍を果たしても、その国にどれだけ長くいるかは誰にもわからない。ひょっとしたら1年で他国リーグへ移籍したり、それこそ日本へ戻ってくることだってあるかもしれない。せっかく語学を勉強しても、ひょっとしたらそれが無駄になるかもしれない。だから多くのチームで“共通言語”となっている英語を学んで、使おうとする選手が多いのはある意味当然のことではあるし、それが悪いというわけではない。
それでも最初からその国の言葉を一生懸命学び、その国の言葉で溶け込もうとする選手はやはり好意的に受け止められるし、ファンからの信頼も愛情も最大級のものとなる。フランクフルトではキャプテンを務めることも多く、試合後にはドイツ語でメディア対応することも少なくない。負け試合でも嫌な顔をみせずにミックスゾーンへ足を運び、適切な言葉を見つけ出し、冷静に自分達の状況を分析し、それを伝えるというのは、誰にでもできることではない。
彼の規律がゆるんだことなんて見たことがない
ティアム「トレーニング中もそうだ。いつでも礼儀正しくて、フレンドリーで、どんな練習も率先して取り組む。彼の規律がゆるんだことなんて見たことがない。チームメイトとして夢のような存在だった。上手くいかないことがあっても引きずらない。すぐにポジティブに考えて取り組む。当時から彼はそういう人だったんだ」