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実は欧州カップ制覇が迫る22歳「日本語で優勝しました!って…」“とにかく明るいSB”菅原由勢に直撃「ロンドンいいっすね!いつか」
posted2023/05/13 11:03
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
ANP/Getty Images
敗れはしたが、その表情は清々しいものだった。
ヨーロッパカンファレンスリーグ準決勝第1戦で、菅原由勢を擁するAZアルクマールは敵地でウェストハム・ユナイテッドに1-2の逆転負けを喫した。もとより彼が快活でオープンだということもあるはずだが、おそらく手応えを感じたからでもあるだろう。試合後のミックスゾーンに現れた22歳のライトバックは、「(取材者が)多いですね! さすがロンドン」と自ら明るく切り出した。
プレミア相手の試合は「一枚も二枚も上だと」
「今のチームがプレミアリーグの相手とやるのは初めてだったので、チャレンジになると思っていました。前半に良い形で先制できましたけど、後半のゲームの進め方は、やっぱり相手の方が一枚も二枚も上だと感じました。やられたのは、セットプレー2回で2失点だったけど、これが強さというか、違いなのかな。後半最後の20分くらいは、完全にこちらが疲れ切っているなか、相手はまだまだ走っていた。日頃の強度の違いは、かなり感じましたね」
口にする言葉を考える時は俯きながらも、たびたび質問者の両目をきちんと見返して話をする。声のトーンは全般的に軽やかだが、「かなり感じましたね」と強調すべきところは語気を強めた。
「もちろんオランダでも、アヤックス戦やPSV戦とか、強度の高い対戦はありますけど、それとは別物でした。ひとつひとつのプレーに120%で対応しないと止められないような相手しかいない。頭を使ったし、準備もした。でもこういう高いレベルの相手とやれて、僕自身すごく楽しい90分でした」
キックオフ前に整列した時は、四股を踏むようにストレッチをして微笑を浮かべ、良い表情で敵地まで駆けつけてきたサポーターに手を振った。前日の練習の時からその美しさに感銘を受けたという芝生の感触を確かめるように、AZの背番号2は初のロンドンでの公式戦のピッチに駆け出していった。
冗談で(笑)、削りに行くからなって
菅原が対峙したのは、ウェストハムの左ウイングのサイード・ベンラフマ──今季のプレミアリーグで6ゴールを挙げているアルジェリア代表だ。オランダに渡って4年目の日本代表右SBは手強い相手に対処しつつ、マイボールの際には内寄りの高めに上がってボールを引き出そうとした。しかし試合最初の決定機は、このマッチアップから生まれてしまった。ベンラフマが菅原との競り合いで粘り、倒れた相手を横目に球を持ち出してフリーでシュート。左斜めから右のボトムコーナーに飛んだボールは、AZの守護神マシュー・ライアンが指先でなんとか弾き出した。