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「マコトはいつも控室でドイツ語の本を読んでいた」長谷部誠の海外1年目を知る大先輩レジェンド、パブロ・ティアムが絶賛する“人間性”
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2023/05/11 11:01
日本代表からは離れるも、在籍するフランクフルトの支柱となっている39歳。長年の活躍につながるルーキー時代の姿勢をレジェンドは見ていた
《39歳》という年齢で守られることなんて望んでいない
ただ一度そのタイミングがずれたシーンがあった。中盤センターライン付近でテュラムにボールが入ったのだが、少しアプローチが遅れてしまった。テュラムはダイレクトでパスをすると、そのままスピードに乗ってスペースへ抜けだし、そこからボルシアMGのゴールが生まれてしまったのだ。試合後、長谷部がこのシーンを振り返り、自身への反省を口にしていたのがとても印象的だった。
「勝ててないときに、あのような簡単な失点の仕方をしてしまうと厳しい。あの場面に関してはやっぱり自分がくさびに入った選手についていかなきゃいけなかったと思う。分析でもやってたんで、厳しくいこうとは思ってたんですけど、後ろを警戒するあまり前についていけなかった。試合を通してああいう1回が勝負のわかれ目に繋がる。10番(テュラム)のクオリティは間違いなく高いけど、ああいうところを90分通してしっかりとやらないといけなかったなと個人的には思いますね」
《39歳》という年齢で守られることなんて望んでいない。ピッチに立つ以上、長谷部はいつでも戦士なのだ。どれだけいいプレーを多くみせても、決定的な場面で決定的なプレーができないことを受け入れるわけにはいかないのだ。そうした悔しさがあるから向上心をもって、100%の熱量でサッカーを続けていけるのだろう。セカンドキャリアどうこうの前に、長谷部はいまなお1人のプロサッカー選手なのだから。
彼はそれだけのことをしてきた
プロ選手としての厳しさを知るティアムは、長谷部のこれまでを次のように話していた。
ティアム「いま彼があの年齢でまだプレーしているのは奇跡なんかじゃないよ。ただ、39歳でまだブンデスリーガで現役でプレーしているなんて普通じゃない。それは彼がしてきたようなサッカーへの取り組み方、向き合い方がなければ、なしえないことなんだよ。彼はそれだけのことをしてきたんだ。プロ選手の鑑だ。だから、彼のプレーを今も見ることができるのを心の底から喜ばしく思っている」
だれもが憧れるようなキャリアを歩む長谷部のことを話すティアムの目は、とても優しかった。