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三笘薫のチームメイト(21歳)をまさかの取り逃し…「なぜアーセナルはあえて31歳MFを獲得した?」チェルシーでも賛否両論あったイタリア代表
posted2023/02/11 17:18
text by
ジョナサン・ウィルソンJonathan Wilson
photograph by
Getty Images
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「もう終わった監督だ」
トップレベルのフットボールでは、監督に対する忍耐が薄い。特に巨額のカネが動く現代は、チームが一時的に躓いたり、不運に見舞われたり、ちょっと不調が続いたりしただけで、指揮官が槍玉に挙げられる。「もう終わった監督だ」とか、「見せかけだけの指導者だ」とか、「このレベルで通用する能力を持っていない」とか、人々は好きなことを口にする(あるいは書き込む)。そして悪い結果が何度か連続すれば、重大な危機と大げさに騒ぎ立てられ、お決まりの問題解決策が検討されることになる──そう、監督の解任だ。
つまりモダンフットボールにおける現場の指揮官というのは、オーナーやファンの不満を解消する生贄と言える。その方がチーム全体を刷新するよりも手軽なのだ。
アーセナルのミケル・アルテタ監督も昨シーズン、そんな状況に直面した。プレミアリーグの開幕戦から3連敗を喫した時だけでなく、後に一度は復調しながら、終盤戦の12試合で6敗してチャンピオンズリーグの出場権を逃した時もそうだった。
だが2007年からクラブの実権を握るアメリカ人オーナーはおそらく、前監督のウナイ・エメリに続いてアルテタまでも在任2年未満で更迭するのは得策ではないと考えたのだろう。同じく首都ロンドンに本拠を置く宿敵、チェルシーを反面教師としたのかもしれない。そのライバルクラブには、オーナーがロシア人オリガルヒからアメリカ人ビリオネアに代わっても、監督の首を簡単に撥ねるカルチャーが残っている。
「アーセナルはケガ人が少ない」
いずれにせよ、アーセナルの首脳陣は現代フットボールの信仰に背く形で、現場のスペイン人監督を信頼し、その決断が正しかったことが今季に証明されている。プレミアリーグの折り返し地点を過ぎたところで、アーセナルは2位マンチェスター・シティに勝ち点5差をつけて首位に立っているのだ(しかも消化試合はひとつ少ない)。19試合で50ポイント──このペースを最後まで維持できれば、2017-18シーズンのシティ以来、プレミアリーグ史上2度目の勝ち点100に到達する。驚くべき足取りだ。