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三笘薫のチームメイト(21歳)をまさかの取り逃し…「なぜアーセナルはあえて31歳MFを獲得した?」チェルシーでも賛否両論あったイタリア代表
text by
ジョナサン・ウィルソンJonathan Wilson
photograph byGetty Images
posted2023/02/11 17:18
1月31日、移籍期限ギリギリにアーセナルに加入したジョルジーニョ(31歳)。2月4日のエバートン戦では59分から途中出場
その理由のひとつに、上位を争うべきライバルと比べて、負傷者の少なさが挙げられる。今シーズンに長期離脱を強いられている主力は、9月に鼠蹊部の手術を受けたエミル・スミス・ロウと、W杯でひざの靭帯を損傷したガブリエウ・ジェズスの2人だけ。不甲斐なく中位に沈むリバプールやチェルシーらは、その影響を色濃く受けている。またアーセナルは今季、ヨーロッパリーグを戦っており、チャンピオンズリーグに参戦しているライバルよりも、選手たちの心身の負担が少ない。
なぜ31歳ジョルジーニョを獲得したのか?
ただしアーセナルの先行きを占うと、選手層に不安がある。2連覇中のシティと比較すれば、各ポジションのリソースの差はことに大きい。だからこそアーセナルは、首位を快走しているにもかかわらず、冬の移籍市場でミハイロ・ムドリク(22歳)とモイセス・カイセド(21歳)を獲得しようとしたわけだ。
結果的に前者はチェルシーへ移り、後者は三笘薫が活躍するブライトン&ホーブ・アルビオンに残ったが、その代わりにレアンドロ・トロサール(28歳)とジョルジーニョ(31歳)を迎えた──より経験のある安価なオプションだった。特に後者について、アルテタ監督は次のように喜んでいる。
「ジョルジーニョは知性とリーダーシップ、豊かな経験を備えるミッドフィルダーだ。すでに多くのタイトルを手にしているが、彼にはまだまだ野心があり、やる気に満ち溢れている」
ジョルジーニョの価値は一見わかりにくく、チェルシーのサポーターの間でも、評価が分かれていた。彼自身が試合を決定づけるような大活躍はあまりしないが、中盤の底から的確な指示と堅実な技術でチーム全体を潤滑に動かす司令塔だ。だから主にSNS上で熟考することなく彼をこき下ろすファンがいる一方で、チェルシーの前監督トーマス・トゥヘルからは「世界最高のミッドフィルダーのひとり」と評され、一昨季にはUEFAからシーズン最優秀選手に選ばれている。トーマス・パーティーとグラニト・ジャカのセントラル・ミッドフィルダーの主力にも見劣りしないし、ポゼッションを高めたい時はジョルジーニョの方が頼りになりそうだ。
24歳の主将・ウーデゴールが語ったこと
ただしジョルジーニョとトロサールの獲得は、近年のアーセナルの補強戦略に反するものだ。アルテタ監督は2019年12月に就任してから、長期的な計画を立て、メスト・エジルやピエール・エメリク・オーバメヤンといったベテランを放出し、自身の哲学に合う若手を揃えていった──ちょうど彼の恩師ペップ・グアルディオラ監督が、バルセロナでロナウジーニョやサミュエル・エトーを放逐したように。