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「監督からめちゃくちゃ怒られました」駒澤大2年前の“奇跡の逆転V”キャプテンが感謝する、大八木弘明監督の“温情采配”「あとで監督の気持ちを知って…」
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byWataru Sato
posted2023/01/22 11:01
2年前の2021年、駒澤大優勝時にキャプテンを務めていた神戸駿介。本人の口から語られた4年時の大八木監督とのやりとりとは…
「だいたいわかっていたので、覚悟はできていたというか、涙は出てこなかったです。ケガをして11月までは歩くこともできなくて、それでも最後メンバーに選ばれるかどうかギリギリのところまでは行けたので。後悔はなかったです」
そうは言っても、悔しさがないわけではなかっただろう。神戸はまだ主将としてチームをまとめる大役を担っていたが、直前で落選した他のメンバーはそうではなかった。神戸がその夜目にしたのは、こんなシーンだった。
「僕は親に電話して、淡々と『外れちゃったわ』って伝えたんですけど、伊東とか加藤はやっぱり泣いてましたね。伊東は自分の部屋に来て、泣き出しちゃって。ちょうどそれを偶然見ていた石川も、後で部屋に来てくれたんですよ。普段そういうことを言わないやつなんですけど、『僕、神戸さんや伊東さんたちの分まで頑張りますから』って。そういうのを見て、悔しさというか、虚無感はありましたね」
不甲斐なかったなって気持ちは、僕にもありました
気になっていたのは、優勝会見で監督が述べたあの言葉だ。
「同じくらいの調子であれば、今回は勢いのある下級生を使おうと思った」
あれを聞いて、神戸たち4年生は悔しくなかったのだろうか。
「全然そういうのは思わなかったです。本当にずっと一緒に練習をしてきた仲間なので、頑張っているのも知ってますし、下級生の実力もわかっている。選考に納得していない選手はいなかったですね。伊東も多分、泣いていたのは自分の力のなさを思ってのことだったと思う。不甲斐なかったなって気持ちは、僕にもありましたから」
同じくらいの調子と言ったのは、むしろ監督の思いやりだったのだろう。同じ会見で監督は「4年生を使ってあげたい気持ちもあったけど、過去にそれ(温情)で失敗したこともありましたので」とも語っている。実際は下級生が思った以上のスピードで力をつけ、最上級生との力の差を逆転して見せた。神戸たちもそれがわかっていたからこそ、納得してチームのサポートに回ったのだ。
迎えた新年、駒澤大の選手は箱根駅伝で躍動した。(#3へ続く)