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「田澤(廉)も泣いていて…」駒澤大“最後の箱根を走れなかった主将”神戸駿介が語る、“強い後輩“への思い「山野(力)だけお礼のLINEがないんです」

posted2023/01/22 11:02

 
「田澤(廉)も泣いていて…」駒澤大“最後の箱根を走れなかった主将”神戸駿介が語る、“強い後輩“への思い「山野(力)だけお礼のLINEがないんです」<Number Web> photograph by Wataru Sato

今年、箱根駅伝で優勝した駒澤大。田澤廉ら4年生から2年先輩にあたる神戸駿介は主将を務めた2021年大会で優勝。当時の話を聞いた

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小堀隆司

小堀隆司Takashi Kohori

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Wataru Sato

 今年、大学駅伝3冠を成し遂げた駒澤大学。その中心となった4年生・田澤廉の2年先輩にあたる神戸駿介は2021年優勝時、主将を務めながら当日変更で10区から外された。どのような思いでチームメイトの走りを見守っていたのか、また“強い後輩”への思いとは――。(全3回のうち第3回/前回は#1#2へ)

9区・山野に叫んだ「絶対行けるから!」

 迎えた新年、駒澤大の選手は箱根駅伝で躍動した。

 1区に抜擢された白鳥は区間15位と苦しんだが、そこから2区の田澤が立て直し、3区では4年生で唯一の出場を果たした小林歩が区間2位の走りでチーム順位を3位にまで押し上げた。5区で区間4位と好走した1年生鈴木芽吹の活躍もあり、往路を終えた時点で3位。首位創価大との差は2分21秒だった。

 そして、復路では6区の花崎悠紀(3年)が区間1位と絶好のスタートを切り、逆襲のシナリオが整う。神戸は当日、9区の途中にある給水係に回っていた。

「その日は石川と一緒に起きて、石川の体調に異変がないことを確認してから寮を出ました。9区に襷がつながったときには1分29秒差で、監督はここで分があると思っていたみたいですけど、創価の石津(佳晃・4年)選手が強くて、徐々に引き離されていたんですね。だから山野(力・2年)も焦っていて、とにかく『相手は後半落ちてくるからな』ってめっちゃ言いました。『絶対行けるから』って、声を振り絞りましたね」

 今の自分にできることは、後輩への必死の声かけだった。チームが勝つために、神戸は給水ボトルを手にしてわずかな距離だが全力で駆けた。そして、遠ざかっていく後輩の背中を見送ると、すぐさま電車に乗ってゴールの大手町を目指した。

僕の中では、一番苦しんだから優勝できたと思ってます

 神戸が電車で移動中に、レースは信じられない展開を見せる。10区の石川に襷が渡った時点で首位創価大との差は3分19秒と絶望的なくらいに広がっていたが、創価大のアンカーである小野寺勇樹(3年)が区間20位の大ブレーキを起こし、残り2km余りのところでついに逆転する。石川は区間1位の力走だった。

 コロナ禍で観客のいない大手町。笑顔でゴールに飛びこんでくる石川を全身で受け止めたのが神戸だった。神戸は顔をクシャクシャにして、チームの13年振りとなる優勝を喜んだ。走れなかった主将が、走った選手以上に喜んでいる姿を見て、こちらも胸が熱くなった。

【次ページ】 もし自分が10区を走っていたら…?

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