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「監督からめちゃくちゃ怒られました」駒澤大2年前の“奇跡の逆転V”キャプテンが感謝する、大八木弘明監督の“温情采配”「あとで監督の気持ちを知って…」
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byWataru Sato
posted2023/01/22 11:01
2年前の2021年、駒澤大優勝時にキャプテンを務めていた神戸駿介。本人の口から語られた4年時の大八木監督とのやりとりとは…
監督を怒らせた「絶対に他のメンバーを入れた方が良い」
「たしか『お前はキャプテンだからメンバーに入れてやる』って言われたんです。でも、僕はすぐに『絶対に他のメンバーを入れた方が良いです』って断って、監督からめちゃくちゃ怒られました。『俺の気持ちを何だと思ってるんだ』って。後で青山から聞いたんですけど、その年はコロナ禍で補欠枠も増えていて、それで僕を入れようという話になったみたいなんですね。青山も推してくれていたようで、監督の気持ちを知ってすごく嬉しかったです」
駒澤大は全日本駅伝でじつに6年振りの優勝を果たす。涙を浮かべるほど監督が喜ぶ姿を見て、神戸の胸も熱くなった。と同時に、優勝メンバーに補欠とは言え名前を連ねられなかったことがやはり残念に思えたという。出雲駅伝が中止になったために三冠の夢は潰えたが、この時点で駒澤大は箱根の優勝候補にも名前が挙げられるようになっていた。戦力は充実し、下級生の力は勢いを増すばかり。だが、神戸たち最上級生にも箱根駅伝のメンバー入りだけは譲れないというプライドがあった。神戸はそこからの2カ月弱、死にもの狂いで練習に取り組んだという。
他の選手もみんな調子が良くて…走るのは難しいかな
「もうめちゃくちゃ集中して、それこそ箱根で1回ピークが来るかなってくらいには仕上げられました。調子自体は悪くなかったんですけど、チームが優勝するくらいですからね、他の選手もみんな調子が良くて……。正直、エントリーメンバーの16名には選ばれたんですけど、走るのは難しいかなと考えていました」
年の瀬も迫った2020年12月29日、区間エントリーが発表され、アンカー10区に神戸の名前があった。当日までに補欠登録のメンバーから6名までの変更が可能だったが、対外的には主将の神戸は箱根に出場すると見られていただろう。
「10区は僕が希望していた区間でもあったので、色んなひとから応援の連絡がありました。大学の集大成として、優勝のゴールテープを切れよって。両親は毎回のように試合を見に来てくれてましたし、この時も勝手に調べて喜んでくれていたと思います」
泣き崩れる同じ4年生、それを見たアンカー石川が…
実際の出場メンバーが監督の口から発表されたのは翌30日のことだった。夜、16名のメンバーが寮の食堂に集まり、1区から順に名前が呼ばれていく。1区は全日本駅伝でも好走した4年生の加藤淳に代わって白鳥哲汰(1年)が入ることが告げられ、8区の4年生伊東颯汰にも交代が告げられた。そして10区、最後に名前が呼ばれたのは神戸ではなく、後輩の石川拓慎(3年)だった。