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「監督からめちゃくちゃ怒られました」駒澤大2年前の“奇跡の逆転V”キャプテンが感謝する、大八木弘明監督の“温情采配”「あとで監督の気持ちを知って…」
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byWataru Sato
posted2023/01/22 11:01
2年前の2021年、駒澤大優勝時にキャプテンを務めていた神戸駿介。本人の口から語られた4年時の大八木監督とのやりとりとは…
「そういうのを僕らの一つ上の代の原嶋(渓・元主将)さんたちが良くしてくれて、自分たちも引き継いでいこうと思ったんです」
改革は功を奏し、部の雰囲気は見違えて明るくなった。神戸たちの最終学年は、4月に東京都に緊急事態宣言が出されるなど、新型コロナウィルスに翻弄された1年となる。外出もままならず、寮で過ごす時間が増える中、なおさらルールを見直した効果は大きかった。
外出は原則禁止、ご飯はコンビニかテイクアウトだけ
コロナ禍の夏を振り返り、神戸はこう懐かしむ。
「学生だからみんな遊びにも行きたいじゃないですか。でも、治療以外は電車に乗るのも禁止になって、週末のご飯も寮の近くにあるコンビニかテイクアウトだけ。ストレスは溜まっていたと思うけど、僕らはちゃんとそれを守りました。みんながやっているからできたところはあると思いますけど、あの1年は帰省もなかったしほんとしんどかった。でも、そのぶん一致団結してましたね」
不自由な生活の中で、神戸は強いキャプテンシーを発揮した。「今同じことをやれと言われてもできないです」と振り返るほど、つねに気を張って部員の手本となるような行動を心がけた。
主将とかの役職でなかったら、僕はもっと逃げていたかも
でも、と言葉を続ける。
「ちょっと逃げていた部分もあるんです。良い選手がたくさん入ってきて、自分たちがやってやろうではなくて、後輩たちがすごいから彼らが力を発揮できるようにすればチームは絶対行けるだろうって。もちろん自分も練習をすごい頑張ったんですけど、走りではダメだったからこっちを頑張ろうみたいな。もし主将とかの役職でなかったら、僕はもっと逃げていたかもしれないです」
皮肉だが、神戸たちが一生懸命に部の風通しを良くしたことで、後輩たちが伸び伸びと力を発揮できるようになり、逆に4年生たちが活躍できる舞台がどんどんと失われていったようにも思える。
2020年はコロナ禍の影響で出雲駅伝が中止となり、全日本駅伝は無観客で開催されることが発表された。神戸は「夏に頑張りすぎた影響で疲労骨折をして」しまい、11月まではジョグもできない状態だった。当然、全日本駅伝のメンバー入りは難しいと思っていたが、監督からこう声をかけられた。