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大学野球PRESSBACK NUMBER
父は名将・馬淵史郎、拓殖大監督・馬淵烈33歳が感謝する“師匠”からの教え「親父からは『とにかく勝て』と」「高嶋仁さんからは…」
text by
内田勝治Katsuharu Uchida
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/12/23 11:01
現在、拓殖大野球部の監督を務める馬淵烈。青年監督のこれまでの野球人生をインタビューで聞いた
馬淵さんは、4年生を引退させ、3年生の世代に切り替えてやるのも一つの案として考えていた。丁々発止のやりとりが続く中で、控えの選手が放った一言が、場の空気を変えた。
「最後までやりたいです」
今でも「泣きそうになる」特別なシーズン
馬淵さんは今でも当時のことを思い出すと「泣きそうになる」という。
「そいつはレギュラーじゃないんですよ。でも『みんなと一緒に卒業しないと意味がない』って。うれしかったですね」
4年生はこのミーティングから結束を固め、誰一人として辞めることなく、2カ月弱のリーグ戦を戦い抜いた。結果は8勝2分け。入れ替え戦、1部昇格の夢が奪われたシーズンを1敗もすることなく、2年ぶりとなる2部優勝まで駆け上がって有終の美を飾ってくれたことを誇りに感じた。
「この試合は負けられないぞ、って真剣勝負でやっていましたから。でも、勝つとか負けるとかは置いておいて、本当に大事なものはなんだろうって、そんなことを勉強させてもらったシーズンでした」
レギュラーだけにスポットライトを当ててほしくない
馬淵さんはコーチ時代から、引退する4年生の慰労会を行ってきた。それを今年は、コロナ対策を万全に施しながら全学年を集めて開催した。
「4年生は引退したら後輩ともしゃべる機会があまりなくなるじゃないですか。レギュラーだけにスポットライトを当ててほしくないんですよ。控えだろうが、裏方だろうが、4年間頑張りましたって、僕は偉いことだと思います」
表舞台に立てなかった人間の気持ちは、明徳義塾で勝ち続けていたら、分からなかったかもしれない。あの時の経験は、指導者となった今に生かされている。
コーチを置かずに一人で100人近い学生を束ねていく過程で、父を含め恩師たちの偉大さも肌で感じるようになってきた。
父のU-18銅メダルに見た真価
9月、U18ワールドカップで高校日本代表の指揮を執った父の史郎さんは、オープニングラウンドで4勝1敗としながら、スーパーラウンドで1勝2敗と負け越し、決勝へ進むことができなかった。
注目したのは3位決定戦。スーパーラウンドで0-8と大敗した韓国を相手に2回までに6点を奪い、そのまま6-2で逃げ切った。
金メダルを期待された大会でそれが叶わず、モチベーションを失ってもおかしくない一戦で、しっかりとチームを立て直し、銅メダルへと導いた手腕に凄みを感じた。