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現役ドラフト成功のポイントは”ちょっと損した気分?” オコエ瑠偉(楽天→巨人)、陽川尚将(阪神→西武)…「すごく驚いたのが率直な心境」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS / Hideki Sugiyama
posted2022/12/11 17:00
12月9日に行われた現役ドラフトで楽天・オコエ瑠偉(左)は巨人へ、阪神・陽川尚将(右)は西武へ
そして、その発想を実現するためのキーワードが「ちょっと損した気分」なのである。
トレードではないが、実はこの考え方こそ今後の現役ドラフトを成功させていくためのキーワードになるのだと思う。
米国のルール5ドラフトを参考に、出場機会のない選手の移籍を活性化させるための日本独自の制度として発足した現役ドラフト。最大の課題は対象選手2人のいずれも球団が指名する点にあった。
どんな選手を各球団が出してくるのか?
そのために当初はシーズン中の開催も検討されたが、最終的には保留者名簿が確定する12月に設定され、リストアップする選手の資格も年俸5000万円以下(ただし1人だけは5000万円から1億円未満はOK)など細かく規定。さらに必ず12球団が最低1人を獲得しなければならない運用のルールも設けた。しかしそれでも、直前まで余剰戦力に近い選手がリストアップされる可能性が高いという指摘も多くあった。
楽天・オコエ瑠偉やDeNA・細川成也もリストアップ
ただ実際にフタを開けてみると、陽川だけではなく1軍通算236試合に出場している18年ドラフト1位の楽天・オコエ瑠偉外野手が巨人に、同194試合のヤクルト・渡辺大樹外野手がオリックスに、同123試合のDeNA・細川成也外野手が中日に移籍。投手でも今回、一番の指名を集めてソフトバンクへの移籍が決まった日本ハムの古川侑利投手は、今季1軍で34試合登板の実績があった。また巨人から広島に移籍の決まった戸根千明投手や細川との1対1のトレードのような形になった中日・笠原祥太郎投手なども1軍での実績は十分だ。文字通り1つ、壁が突き破れないままに低迷していた選手たちに光が当たったことになった。
環境が変わればひょっとしたら“大化け”する可能性のある選手が、少なからずリストアップされ新天地を得た。そういう意味では「ちょっと損するかもしれない気分」でリストアップした球団が多く、それがこの制度の船出としては、一つの結果をもたらすことにつながったのだと思う。
ただ、その一方で今後への課題も残されている。