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現役ドラフト成功のポイントは”ちょっと損した気分?” オコエ瑠偉(楽天→巨人)、陽川尚将(阪神→西武)…「すごく驚いたのが率直な心境」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS / Hideki Sugiyama
posted2022/12/11 17:00
12月9日に行われた現役ドラフトで楽天・オコエ瑠偉(左)は巨人へ、阪神・陽川尚将(右)は西武へ
「残っていた選手の中にも魅力的な選手はいた」
その課題が結果的には1巡だけで指名が終了してしまった点だろう。実は一部の球団は2巡目の参加を希望していた。ある関係者に聞くと「残っていた選手の中にも魅力的な選手は何人かいた」というが、当該選手のいる球団が参加しなかったために成立しなかったのだという。
現行はあくまで1人の選手を出したチームは、その“補償”として1人の選手を獲得できるという前提ということだ。これでは2名をリストアップした意味がなくなる。制度の目的が、あくまで埋もれている選手に活躍の場を与えるということならば、今後はリストアップした2名は指名されれば、必ず移籍できるようにするべきだろう。そこでもし当該球団が残っている選手の中に指名する選手がいない場合には、金銭などで補償するということも考えていいのかもしれない。
そこでも選手を出す球団は「ちょっと損するかもしれない気分」で指名に応える覚悟が求められる。その気持ちがあって、初めて大胆な選手の移籍は成立する――それこそ根本さんの教えではないだろうか。
もちろん今回移籍が実現した選手が、新しい球団でレギュラーになれる保証もないし、環境が変わって逆に力を発揮できなくなる可能性も十分にあるだろう。その一方で彼らの内の1人でも2人でも、新しいチームでブレークして結果を残すようになれば、この新制度はもっと可能性を広げる形で進化していくはずだ。
まず扉は開かれた。
その先にどんな未来が広がっているのか。「ちょっと損した気分」で球界全体が動き出せば、現役ドラフトは選手発掘の大きな力となるはずである。