Jをめぐる冒険BACK NUMBER
立役者・堂安律の“熱い言葉”に未出場シュミットが「もっと頑張ろう」と感激…同じ立場の柴崎岳、川島永嗣も思い描く「新たな歴史」
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJIJI PRESS
posted2022/12/05 17:29
ドイツ戦で喜びを共にするシュミット・ダニエルと堂安律ら日本代表。主力とサブの選手はそれぞれどんなことを考えているのか
森保ジャパンを支え続けた柴崎が今感じていること
ロシアW杯でベスト16進出の立役者となりながら、ここまで出場機会を得られていない男もいる。
「森保ジャパンが発足したときから、ベスト8を思い描いて4年間やってきて、ついにその挑戦権というか、歴史を作る場を自分たちで勝ち取ったなという思いでいます」
チーム発足から3年間、森保ジャパンの中盤の底には、いつも柴崎岳の姿があった。
流れが大きく変わるのは、21年10月のアジア最終予選、敵地でのサウジアラビア戦だった。柴崎のパスミスから失点して手痛い2敗目を喫すると、続くオーストラリア戦以降、スタメンから外れる試合が増えた。
W杯出場が決まったあと、柴崎は「達成感より安堵感のほうが大きい」と吐露したが、理想は自身がピッチに立って、勝利に貢献することのはずだ。もどかしさや悔しさを押し殺し、自らに言い聞かせるように戦ってきたのだろうか。
今夏に話を聞く機会があったが、柴崎はこんなふうに振り返っていた。
「個人的に満足できない状況になっても、それをどうにかしようという気持ちはまったくなかった。日本代表が勝利して、W杯の出場権を獲得するということだけにフォーカスしていたので。自分が出ても出なくても、勝利することが一番大事だと捉えていた。そこへの迷いや葛藤は全然なかったですね」
つまり、ラウンド16を前に「自分たちで勝ち取った」という発言は、W杯が開幕して1分たりともピッチに立つ機会を得られていなくても、当事者として、チームの一員として、ベスト8進出に邁進していることを意味する。
「僕としては、自分にとってプラスだと思うことを」
柴崎の思いに触れながらコメントに耳を傾けていると、「歴代の代表には出番がなくてもサポートの役割を担う選手がいた。柴崎選手が今やっていることはチームにプラスになっているのでは?」という質問が飛んだ。柴崎の答えはこうだ。
「そういう風にポジティブに想像してもらえると非常に助かるんですけど、実際はそんなにいいものではなくて。周りの人が自分のやっていることをどう見るかは自由ですけど、僕としては、チームにとってプラスだったり、自分にとってプラスだと思うことをやりたい。歴代の先輩方の姿は見てきましたけど、あくまで自分のパーソナリティの中でできることをしっかりやろうと」
それこそがベテラン選手の振る舞いだと讃えるのは簡単だが、そのように振る舞えるベテランばかりではない。柴崎の人間性によるものであり、こういう選手にチームが支えられているのは間違いない。
選手それぞれの思いを結集させて、森保ジャパンはベスト8への扉を開こうとしている。<つづく>
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