Jをめぐる冒険BACK NUMBER
立役者・堂安律の“熱い言葉”に未出場シュミットが「もっと頑張ろう」と感激…同じ立場の柴崎岳、川島永嗣も思い描く「新たな歴史」
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJIJI PRESS
posted2022/12/05 17:29
ドイツ戦で喜びを共にするシュミット・ダニエルと堂安律ら日本代表。主力とサブの選手はそれぞれどんなことを考えているのか
「彼自身が一番悔しいと思うので。落選したメンバーについて聞かれたときも言いましたけど、彼の分まで戦う、みたいなことは簡単には言えない。彼が試合を見たときに誇らしいと思うような試合を全員でやりたいです。彼の力はこれから絶対に必要になってくるので、しっかり休んでもらって次に繋げたいと思います」
「律のおかげなのは間違いないですけどね。でも」
チーム全員で戦っているのが事実であっても、ピッチに立てる人数には限りがある。
GKシュミット・ダニエルも出場機会を得られていない選手のひとりだ。
開幕前はシュミットを守護神に推す声もあったが、現実はそうならなかった。
堂安の言葉を伝え聞いたシュミットは、ベスト16進出について「律のおかげなのは間違いないですけどね」と笑みを浮かべたあと、こう続けた。
「でも、そういう意識で僕たち、試合に出ていない選手も戦っているし、試合で活躍した選手がそう言ってくれるのは、試合に出ていない選手にとって励みになります。もっと頑張ろうという気にさせてもらいました」
4度目のW杯となる39歳のGK川島永嗣も、今大会のピッチには立っていない。
森保監督が選手時代に体験した93年10月の“ドーハの悲劇”――あと数秒のところでW杯初出場を逃した――をリアルタイムで見た選手は、今回の代表チームでは、川島だけになってしまった。
「僕は小さいながらにあのときの記憶が残っていて、ずっとサッカーをやってきた。今回こういう形で、まだ続きがありますけど、日本のサッカーの歴史を刻めているのが自分としてはすごく嬉しいです」
“ロストフの悲劇”を知る川島だからこそ
川島自身は18年ロシアW杯の“ロストフの悲劇”――2-0とリードしながらベルギーに逆転負けを喫した――の経験者である。あの日のことは一生忘れることはないという一方で、過去にとらわれる必要もないという。
「18年の経験者にとっては歴史を塗り替えるチャンスだと思うし、若い選手たちからすれば、これまで日本サッカーが成し遂げられなかったことを達成するチャンスだと思う。そういった意味で、思いは違ってもいいと思います」
スペイン戦の前に川島はチームメイトに熱い言葉を投げかけたようだ。クロアチア戦の前にも発言の機会が与えられたなら、どんな言葉を伝えるつもりか。そう問われると、川島は「ここで言うわけないでしょう」と苦笑した。
クロアチアとの決戦前、最年長の川島は最高のチームメイトたちにどんな言葉を投げかけるのだろうか。