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「モリヤスはアイデアで勝った」“歴史的番狂わせ”現地のドイツ人記者の本音…日本をどう見た?「アサノの2点目は信じがたいゴールだ」 

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フィリップ・セルドーフ/南ドイツ新聞

フィリップ・セルドーフ/南ドイツ新聞Philipp Selldorf / Süddeutsche Zeitung

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posted2022/11/25 11:03

「モリヤスはアイデアで勝った」“歴史的番狂わせ”現地のドイツ人記者の本音…日本をどう見た?「アサノの2点目は信じがたいゴールだ」<Number Web> photograph by Getty Images

劇的な逆転勝利を挙げ、試合終了後に喜ぶ堂安律ら日本代表とドイツ代表DFリュディガー

 するとフリック監督は再び、理解に苦しむカードを切った。この日のドイツのベストプレーヤーのひとり、ジャマル・ムシアラを交代させてしまったのだ。日本の守備陣をもっとも脅かしていたこの19歳のMFは、最高のフィットネスで大会に入り、疲れが目立っていたわけでもない。同点とされてゴールが必要になった状況で、どうしてそんな決断にいたったのか。代わりに投入したマリオ・ゲッツェの神通力に賭けたというのなら、勝ち目の薄いギャンブルに負けたとしか思えない。

なぜ浅野の“信じがたい得点”を許してしまったか

 結果論かもしれないが、対する森保一監督の采配は理に適ったものだった。ハーフタイムに、久保建英に代えて冨安健洋を投入して3バックに移行。これで少しずつ流れを引き寄せ、さらに57分に送り出した左ウイングバックの三笘薫とストライカーの浅野拓磨、70分台に続けて途中出場させた堂安と南野拓実の全員が決定的な仕事をした。賢いアイデアの連続で、完全に日本のペースに持ち込んでいる。

 ドイツはまた、最大のウィークポイントのひとつ、守備陣のサイドを改善できないまま本番を迎えてしまっている。右SBを担ったのは、本来CBのニクラス・ズーレだ。頑健な巨躯が自慢の守備者は、最終ラインの中央で敵の球を弾き返すことにかけては人後に落ちないが、フルバックらしい軽快な攻撃参加は期待できない。実際、同点にされてから何度かオーバーラップした場面では、出足が遅すぎたり、逆に早く動きすぎてオフサイドになったりした。

 左SBのダビド・ラウムが高い位置に出ていくため、ズーレは右で守備的に振る舞ってバランスを取ったとも考えられるが、それならば、日本のように3バックにしてもよかったはずだ。また22歳のCBニコ・シュロッターベックは好タレントに違いないが、この日が代表7試合目で、しかも過去2試合で終盤に1度ずつ、ボックス内でファウルを犯し、PKを献上している(どちらも今季のネーションズリーグのイングランド戦)。おそらくその記憶が残っていたため、浅野の逆転ゴールのシーンではタックルにいけず、ズルズルとついていくだけになり、信じがたい得点を許してしまったのではないか。

「あんな大失敗は一度きりの事故だと思っていた」

 セルジュ・ニャブリやカイ・ハバーツ、そしてムシアラらが逃したチャンスのつけはあまりにも大きかった。そしてフリック監督はマンシャフト(ドイツ代表)の指揮官として、またしてもサポーターを落胆させた。

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