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ドラフトウラ話…他球団スカウトがガッカリ「あぁ、ロッテに獲られた」「ウチも3位指名のはずだったのに…」スカウトたちの悲しいドラマ
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2022/11/12 11:01
ロッテに2位指名された天理大・友杉篤輝内野手(22歳・171cm70kg・右投右打・立正大淞南高)
「ドラフトっていうのは、真ん中らへんの順番でも、1人指名したあとに、よそが12人ぐらい指名するまで、次の番が回ってこない。今年のウェーバー順で最後のヤクルトだったら、2位・3位指名の後は、よそが22人指名するのを、指をくわえて見てるわけですよ。ウチだって、地区担当のスカウトがいるわけだから、よそが誰かを指名するたびに、その選手を担当していたスカウトのタメ息が聞こえてくる。スカウトの“夢”が1つずつ消えていく時間。これは、結構辛いものありますよ……どこもそうでしょうけどね」
何年もかけて追いかけ、試合に、練習に、何度も足を運んだピッチャーが、バッターが、ただひと言のアナウンスで、「他球団のもの」になっていく切なさ。
ドラフトが始まったのは、もう60年ほども前の1965年になる。
「今はもう、選手どころか、スカウトだって、生まれた時からドラフトがあった世代だから、制度そのものをどうこう言う時代じゃないし、今さら自由競争なんてありえないけどね。自分たちが指名するのは、毎年せいぜい7、8人。逆に60人も70人も、よそに取られる。ドラフトって、どこかが誰かを獲った……しか伝えられないけど、その反対側で、よそが誰か1人を指名した瞬間に、そのたんびに、どこかのスカウトの夢が1つずつ消えていく。こういう仕事をしている現場の自分たちにとっては、それもドラフトなんだよね」