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ドラフトウラ話…他球団スカウトがガッカリ「あぁ、ロッテに獲られた」「ウチも3位指名のはずだったのに…」スカウトたちの悲しいドラマ
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2022/11/12 11:01
ロッテに2位指名された天理大・友杉篤輝内野手(22歳・171cm70kg・右投右打・立正大淞南高)
「ずいぶん早いなぁ……と思ったんです。2巡目の、それも3番目でしょう。頭から15人目ですから、1位とそんなに変わりない。ウチもそうですけど、3位で考えてたところ、結構多かったんじゃないですか? その『ちょっと早いなぁ』っていう感覚が、やられた!ってことなんじゃないかな」
ウチも、もっと早くいかなきゃいけなかったんじゃないのか? それぐらい、いい選手だったんじゃないのか、じつは? そんな反問があとに残るという。
「実際、ドラフトの後で試合を見る機会があったんですけど、守りのスピードと精度が両立してる。スローイングの細かい部分でちょっと直したほうがいいなって、1カ所ありますけど、派手なプレーも堅実な守りもできる。走れて守れる選手は、代走や守備要員から実戦に食い込める。そこから打席のチャンスももらえるから、バットで勝負のタイプよりものすごく得なんですよ」
11月2日、大阪市長杯争奪関西地区大学野球選手権。つまり、明治神宮大会・大学の部の「関西地区予選」である。
その天理大と関西大との第2代表決定戦。友杉のファーストプレーだった。
ショート後方にふらっと上がった小フライ。どん詰まりで滞空時間も短いその打球を、背走したまま向こう向きにキャッチした打球感覚の素晴らしさ。
二塁手の左に飛んだゴロからのトスをセカンドベースをトップスピードで駆け抜けながら、一塁にストライクスロー。あっという間に併殺を完成させた一瞬のプレーの鮮やかさ……きっと本人も入団発表かどこかで、「ロッテの先輩の小坂誠選手のようなショートに」と言うかもしれないが、すでにして、現役当時の小坂遊撃手のスピード感そのもののプレーを体現できていた。
「他球団スカウトのタメ息が聞こえてくる」
他球団の指名について、スカウトの方の話は続く。
「そりゃあ、キャッチャーですよ。うん、高校生ね。4位の最初のところで、山浅(龍之介・聖光学院高、中日指名)と清水(叶人・健大高崎高、広島指名)が取られちゃったら、もういないんだ今年は。だって、出てないでしょ。その後に高校生のキャッチャー」
そのスカウトの方は、ちょっと怒っておられるようだったが、後の話に、胸を突かれる思いがした。