なぜトライアウトに警備・保険会社や医療法人が熱視線？「ある企業は元プロを採用して…」悲壮なドラマだけでない“再出発の第1歩”

　トライアウトはプロ野球選手にとって、選手を続けるための最後のチャンスであり、多くの選手にとっては〈野球をあきらめる〉機会でもある。だからこそ、悲壮な決意でグラウンドに出ている。

　しかし見方を変えれば――トライアウトは、選手にいろいろな選択肢を提示する人が集まった「人材見本市」の機会でもある。トライアウトの取材に行くときは、グラウンド内だけでなく周辺の人々の声にも耳を傾けることにしている。

　今年の楽天生命パーク宮城のトライアウトでは、球場の受付では「選手」「選手家族」「メディア」に加えて「プロスカウト」「アマスカウト」の受付があった。

　球場の前では新たにスカウトに任じられた元野球選手の球団職員が、名刺交換をしている。これもトライアウトの見慣れた風景だ。

桑田ファーム総監督、稲葉GM、独立L福島・岩村社長も

　球場のバックネット裏にはNPB球団関係者が陣取る。ほとんどがスーツ姿だから、そこだけ空気が違う感じがする。巨人の若手を見ることになった桑田真澄ファーム総監督、日本ハムの稲葉篤紀GMの姿もあった。

　NPB球団だけでなく、独立リーグの関係者もいる。例えば福島レッドホープスの岩村明憲社長もいる。岩村さんは宮崎、沖縄の春季キャンプから、独立リーグのトライアウトまで、本当にいろいろなところで見かける。

　独立リーグ球団にとっては「12球団合同トライアウト」は、有力選手を獲得する大きなチャンスでもある。「NPB未満、独立リーグ以上」の選手をピックアップしてスカウトするのだ。年俸には規定の額があるが――スポンサーを紹介するなど、いろいろな便宜を供与して1年間プレーしてもらおうとする。選手も「あわよくばもう一度NPB」の期待をもって、独立リーグでプレーする。

©Hideki Sugiyama

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　また「その他プロ球団のスカウト」というブルーのパスをぶら下げた外国人もいる。一般客席の上段に陣取っていたが、MLB傘下のマイナーリーグや米独立リーグのスカウトだ。彼らも「これは」と思う選手をピックアップしようとしている。

ある社会人野球の指導者が話していたこと

　さらにプロアマの垣根が低くなることで、社会人野球チームのスカウトもやってくるようになった。ある社会人野球チームの指導者はこのように話す。

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