- #1
- #2
プロ野球PRESSBACK NUMBER
デーブ大久保がパ6球団を本音で分析「12球団で最も育成が成功」「ビリでもいいくらいなのに」…あの西武“伝説的スカウト術”も明かした
posted2022/10/17 11:23
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
BUNGEISHUNJU
そもそも“候補選手”はどう決める?
西武で打撃コーチとして多くの強打者を育て、楽天では2015年に一軍監督をつとめた大久保氏。現場の指導者としてだけでなく、西武で編成担当の経験もあり、フロント側としてのチーム強化や戦力補強についての知識も豊富だ。チーム編成を考える上で、まず押さえておきたい大事なポイントは何だろうか。
「基軸として、現状のチームの中でまず28人の選手構成を考えること。これは一軍登録の選び抜かれた戦力です。その上で、残った選手の中からもう1つ分チームを作る要領でさらに28人を選ぶ。その2つのグループの選手を見ながら、年齢別、左右別、実力別に区分していくと、戦力の偏りや、チームの補強ポイントが見えてくるわけです」
常勝チームを作るためには、年齢のバランスが大切だ。
「同じポジションに30代ばかり何人もいるような状況だと、数年後に世代交代に苦労することになる。そこをドラフトで20代半ばの即戦力選手を指名して埋めるのか、あるいは外国人やトレードで選手を補強するのか。左右のバランスにしても、あまりに偏っているようではチームの穴になりますからね」
その観点も踏まえながら、12球団の補強ポイントをチェックしていく。
オリックス)万全の編成も「一つ気になるとすれば…」
まずは最終戦で劇的な大逆転優勝を果たしたオリックス。連覇を牽引した主力のほとんどが自前で育てた生え抜き選手で、エース山本由伸や宮城大弥、宗佑磨ら高卒選手の育成はもちろん、吉田正尚に代表される大卒選手、杉本裕太郎や福田周平など社会人出身の即戦力とバランス良く強化に成功している。
「育成という意味で、今12球団で最も成功しているチームはオリックスじゃないかな。チームの編成方針が全くブレていない。山本、吉田と投打の軸がきちんとあって、そこに続く主力も、外国人選手に頼らないチーム編成がきちんとできている印象があります」
今季はチーム本塁打数がリーグワースト(89本)と攻撃面では爆発力に欠けたものの、山本を中心とした投手陣は安定。特にリリーフでは本田仁海、阿部翔太、宇田川優希が開花し、先発から配置転換した山崎颯一郎も加わって若い力が台頭した。
「阿部や山崎颯は下位指名、宇田川は育成出身ですからね。決して選手層が厚いわけではないんだけど、誰かが抜けると他の誰かが台頭するという好循環が生まれている。オリックスは今年のドラフトについては、即戦力より将来性重視の指名に舵を切ってもいい。一つ気になるとすればキャッチャーかな……」
正捕手を固定できないのはここ数年の課題。今季の先発マスクは若月健矢が52試合、伏見寅威が66試合、頓宮(とんぐう)裕真が22試合と分け合った。
「巨人での現役時代、自分も村田真一さんとポジションを争って“帯に短し襷に長し”なんて言われたからね。女房役は別に一人じゃなくてもいいんです。ただ、ピッチャーを育てる、野手を鼓舞するという存在がきちんと決まると、チームがうまく回っていく。それがキャッチャーならベスト。レギュラーじゃないとどうしても遠慮が出ちゃってチームをまとめづらいし、正捕手を固定できればもっと強くなると思う」