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プロ野球PRESSBACK NUMBER
デーブ大久保がパ6球団を本音で分析「12球団で最も育成が成功」「ビリでもいいくらいなのに」…あの西武“伝説的スカウト術”も明かした
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2022/10/17 11:23
2008年、一軍打撃コーチとして西武の日本一に貢献。来季は巨人の打撃チーフコーチに就任するデーブ大久保氏がパ球団の補強ポイントを分析
ソフトバンク)独自のドラフト戦略を「貫いてほしい」
一方、巨大戦力を誇るソフトバンクは「世代交代」をテーマに掲げた1年だった。
「チームの長期的な戦略という点では、今年は絶対に優勝が求められていたわけじゃないシーズン。選手育成を掲げているんだからビリでもいいくらいなのに、それを2位まで押し上げられるのだから藤本(博史)監督は大したものですよ」
野手では三森大貴や柳町達が成長し、周東佑京が故障から復帰。投手でもシーズン途中から先発転向した板東湧梧が活躍するなど、未来図が描けてきた状況だ。
「優勝をかけた大事な試合でも、藤井皓哉や泉圭輔にマウンドを託してね。二人は悔しい思いをしたけど、それを肥やしにできた時には、盤石のリリーフ陣の一角を築けるんじゃないかな。ソフトバンクは二軍、三軍に才能が溢れていて、さらに四軍を作るという話もある。すでに1位指名を愛知・誉高のイヒネ・イツア内野手と公表していますが、目先の補強ポイントうんぬんより、未完成でも才能溢れる選手を山ほど獲得して、競争を勝ち抜いた選手を戦力にしていく、という独自路線のドラフト戦略を貫いてほしいですね」
西武)課題は野手…「主力が30歳前後」の懸念も
3位に滑り込んだ西武は、今季チーム防御率がリーグトップの2.75と飛躍的に改善するなど投手陣が成長。一方でチーム打率(.229)は12球団最低と貧打に苦しみ、失策数(86)も日本ハム、阪神と並び12球団ワーストと守備の綻びも目立った。
「課題は野手。いまだに勝負どころで栗山(巧)、おかわり(中村剛也)に頼りきりというのでは……。二人が安心して引退できるような選手が台頭してきていない。チームの年齢構成を見ても、主力が揃って30歳前後とちょっとバランスの悪いところがある。ここ数年で立て続けにFA権を獲得する選手がいることもあるし、少々年齢がいった24、25歳の選手でも即戦力として獲っておいたほうがいいかもしれない」
その意味でも、すでに1位指名を公表している蛭間拓哉(早稲田大)をなんとしても獲りたいところだろう。
もともと西武は育成に定評がある球団だ。1985年にドラフト1位で入団した大久保氏も伝統的なスカウティング術、育成力の高さを知り尽くしている。
「西武が選手を獲る時の第一条件は体力がある選手。ひたすら練習させれば何とかなる、というチームだから。昔はスカウトにスピードガンを持たせないという伝統もあった。数字ではなく、プロが生で見た球質のいい投手をリストアップする。(GM的な存在だった)根本(陸夫)さんからの教えとしては、選手を見るときは他球団のスカウトと固まって見ていてはダメ。一塁側から見たり右中間から見たり、色々な角度から選手を見ろ、という話も聞いた。
根本さんは各地のタクシー運転手さんに“いい選手いたらライオンズに連絡しろ”って小遣いを渡してスカウト役にしていた、という伝説もあるくらい。今で言うところのバードドッグだよね。そういうスカウティング術の伝統は今も脈々と受け継がれているから、どんな選手を指名するのか楽しみです」