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完全試合シーズンを「タイトル無冠」「9勝4敗」…佐々木朗希の今季成績をどう考えるか? あの“3年前の大論争”に思う日本野球の激変
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byJIJI PRESS
posted2022/10/15 06:00
完全試合を達成した今季。終わってみれば、20試合登板で9勝4敗。この数字をどう考えるべきか?
「高卒1年目」から活躍の例はあるが…
たとえば、鮮烈なデビューを飾った平成以降の投手のひとりに、松坂大輔(元レッドソックスなど)が挙げられる。甲子園を春夏連覇して乗り込んだプロ1年目で16勝を挙げる大活躍。松坂のルーキーイヤーの奮闘ぶりは高卒選手でも1年目からプロで活躍できることを証明するものだった。
その後もダルビッシュ有(パドレス)、涌井秀章(楽天)、田中将大(楽天)などが高卒1年目からデビューを飾り、活躍を見せた。
しかし、松坂や田中、ダルビッシュができたから、「みんなができる」というわけではない。力量だけでなく、体や技術の成長過程も選手によって異なる。
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事実、「高卒1年目」のリミッターが外れた陰で、そうした早いデビューがのちのキャリアに影響を与えたケースも少なくない。高校時代に155キロを計測した佐藤由規は1年目にデビューし、6試合に登板し2勝1敗と活躍。4年目までは順調な成長を見せたが、5年目からは低迷。育成降格や移籍などを繰り返し、エースの座を掴むことはできなかった。
1年目に8勝を挙げた武田翔太(ソフトバンク)や、やはり20試合に登板して7勝を挙げた釜田佳直(楽天)も、当初期待されたポジションを現在のところ獲得できていない。松坂大輔と同じ春夏連覇のエース・藤浪晋太郎(阪神)も、高卒1年目から華々しいデビューを飾り、以降3年連続二桁勝利を挙げたが、4年目からは成績・パフォーマンスともに低迷。今季、ようやく復活の兆しを見せたが、期待されたような投球を見せられていない。
一方、高卒1年目のデビューはなかったものの、順調な成長曲線を描いた例として挙げられる選手が前田健太(ツインズ)だ。