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完全試合シーズンを「タイトル無冠」「9勝4敗」…佐々木朗希の今季成績をどう考えるか? あの“3年前の大論争”に思う日本野球の激変 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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posted2022/10/15 06:00

完全試合シーズンを「タイトル無冠」「9勝4敗」…佐々木朗希の今季成績をどう考えるか? あの“3年前の大論争”に思う日本野球の激変<Number Web> photograph by JIJI PRESS

完全試合を達成した今季。終わってみれば、20試合登板で9勝4敗。この数字をどう考えるべきか?

最適解は「前田健太の育成」にある?

 田中と同期の前田は、1年目をファームで過ごし、二軍のローテーションで103.2イニングを投げた。当然、ファームからの一軍推薦もあったが、当時のカープ指揮官マーティ・ブラウンが「高卒1年目から無理する必要はない」と固辞したと言われている。

 前田は2年目の2008年にデビューを飾ると、登録と抹消を繰り返し、18試合に先発して投球回は109.2。前年と同じイニング数を一軍で投げ、9勝を挙げた。そして3年目の2009年に開幕ローテーションに入ると、中6日でほぼ1シーズンを投げきった。チーム状態もあって8勝14敗と大きく負け越したが、翌年には15勝8敗で、最多勝、最優秀防御率、最多奪三振などの投手タイトルを総ナメし、沢村賞を獲得。球界を代表する投手へと成長を遂げたのだった。

 筆者はこれを「マエケン育成」と呼んでいるが、彼の成長過程こそ高卒投手の最適解といえるのではないか。

 1年目をファームでの研鑽期間にあて、2年目で一軍デビューを飾る。登板後には選手登録が抹消される、いわゆる“投げ抹消”で1年間を回り、登板間隔を空けての先発を繰り返す。選手登録は抹消してから再登録まで10日間空ける必要があるため、自然に登板間隔が空く。体のケアに細心の注意を払った上で登板機会をしっかり得て、1年間を投げ切るのだ。その経験を経て、3年目以降から本格的に先発ローテーション入りを目指す――。

 今季は怪我で活躍できなかったが、ヤクルトの奥川恭伸も2年目の昨季は「投げ抹消」の機会が多かった。佐々木、奥川と同期の西純矢(阪神)も、2人と比べて1年遅れているものの、今季は体へのケアを図りながら、13試合に先発し6勝を挙げた。

【次ページ】 昨季、今季の登板回数は妥当

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