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完全試合シーズンを「タイトル無冠」「9勝4敗」…佐々木朗希の今季成績をどう考えるか? あの“3年前の大論争”に思う日本野球の激変
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byJIJI PRESS
posted2022/10/15 06:00
完全試合を達成した今季。終わってみれば、20試合登板で9勝4敗。この数字をどう考えるべきか?
昨季、今季の登板回数は妥当
今季の佐々木の登板を見ていると、投球回で少し上回るも「マエケン育成」2年目の数字に近い。前田と違って、1年目の佐々木は二軍でも登板していない点を踏まえると、実質的に昨年がキャリアのスタートといえる。そう考えれば、今季の登板回数は妥当なラインと言えるのではないか。
また、ロッテの育成方針は分からないが、「マエケン育成」に沿えば来季からリミッターが外れる。その意味では、来季が佐々木にとって本当の真価が問われるシーズンといえるだろう。
【前田健太と佐々木朗希の成績比較】
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●前田健太
1年目…一軍登板なし(二軍登板はあり)
2年目…登板19、投球回109.2、9勝2敗
3年目…登板29、投球回193、8勝14敗 ※中6日でほぼ1年を投げ切った
4年目…登板28、投球回215.2、15勝8敗
●佐々木朗希
1年目…一軍登板なし(二軍登板もなし)
2年目…登板11、投球回63.1、3勝2敗 ※二軍で登板5、投球回20
3年目…登板20、投球回129.1、9勝4敗
4年目…??
こうした佐々木の「過保護」とも呼ばれる育成は、選手をチームの財産と考えた場合、至極妥当なもののように思える。さらに言えば、野球人口が減少傾向にある昨今、すでに「日本野球界に選手は腐るほどいる」と呼ばれる時代ではなく、いかに現有戦力を本当の意味での“戦力”に育て上げられるかが球団に求められている。そうした状況も、野球関係者、ファンに長期的な育成の理解を促したように思う。
変わりつつある「育成への考え方」
佐々木は完全試合を達成した翌登板でも、8回まで完全投球を見せた。しかし、チームに得点が入らないまま迎えた9回、佐々木はマウンドに上がらなかった。かつてなら、このような起用は物議をかもしてもおかしくはなかった。それこそ、佐々木が大船渡高時代、決勝戦の登板を回避して指導者が批判を浴びたように。
「この日の無理が、将来に大きな影響を与える」という判断がロッテと大船渡双方の共通点だろう。しかし、今季のロッテが下した決断に異議を唱える評論家は少なかった。「長く現役で見られる選手」を育成する方が球団にとってプラスになるという認識が広がった証といえる。
「育成段階のタイトル」より「長く投げられる未来」に希望がある。佐々木は来季以降、多くのファンが期待するような獅子奮迅の活躍と炎のピッチングを見せてくれるに違いない。
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