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”男女7人遭難”も発生…近年急増、SUP事故はなぜ起きる? SUP元日本王者が明かす要因「見た目以上に体幹、筋力、スタミナが必要」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byGetty Images
posted2022/10/02 11:00
海上保安庁によると2019年に国内で発生した事故は32件、翌20年は66件と倍増。21年以降も増加。内訳は帰還不能が最も多い
「遭難した方々がインフレータブルボードを使っていたのかはわかりませんが、小さな子どもを連れていたということで、浮力を確保できるインフレータブルボードを使用していた可能性は高いと思います。インフレータブルボードは、空気を入れるのでハードボードにくらべ軽く、浮力があるのが特徴です。つまり非常に風の影響を受けやすいということでもあり、海上の状況によっては制御するのが難しくなります。軽く、安価で、取り扱いに長けたインフレータブルボードが人気なのはわかりますし、決して駄目というわけではないのですが、今言ったようなデメリットもありますし、また損傷や経年劣化によるパンクもないとはいえないので、使用するときは状況の把握や道具の管理などをしっかりしていただいた方がいいと思いますね」
人間の自己認識の危うさ
そして最後、事故の一番の原因は、SUPに乗る人間の“自己認識”にあるとTAKAさんは言う。
「手軽に始められて、初心者でも乗れるということで2~3回やると自分はもう大丈夫だと思ってしまい、そういった過信から事故が起こってしまう気がします。やはり自然を相手にするわけですし、細心の注意を払わなくてはいけないのに『大丈夫大丈夫! なんとかなるでしょ』という感覚が少なからずあるのではないかと。私もこの業界が長いので、見ていて危ないなって人がいると海で声を掛けるのですが、『はい、わかりました』と言って素直に聞いてくれる人もいれば、『はいはい』と聞き流す人、逆に反発をして食って掛かってくる人もいます。そういう意味で安全性を周知させるのは非常に難しいことだと感じています」
初心者にはこうアドバイスを送る。