Number ExBACK NUMBER
”男女7人遭難”も発生…近年急増、SUP事故はなぜ起きる? SUP元日本王者が明かす要因「見た目以上に体幹、筋力、スタミナが必要」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byGetty Images
posted2022/10/02 11:00
海上保安庁によると2019年に国内で発生した事故は32件、翌20年は66件と倍増。21年以降も増加。内訳は帰還不能が最も多い
「風の種類は大きく分けるとふたつあって、沖から海岸に向かって吹く“オンショア”と逆に海岸から沖に吹く“オフショア”があります。例えばここ湘南周辺ならばオンショアは南風、オフショアは北風になりますね。SUPをやる上で、気をつけなければいけないのは特にオフショアのときです」
これからの季節も注意が必要な北風
事故当日は沖に強い北風(オフショア)が吹いていたという。
「陸から海へ向かって風が吹いているので海岸から沖へ出ていくときはいいのですが、海岸へ戻ろうとすると風に逆らわなければいけないので体力と技術が必要となります。私のスクールでもオフショアが強いときは中止にすることもあります。SUPは見た目以上に体幹、筋力、スタミナが必要になります。またしっかりと状況を見て判断することも大事になります。特にこれからの季節から冬の間オフショア(北風)が強くなります。また波打ち際と海岸付近の目に見える範囲が凪(無風で海が落ち着いた様子)だとしても、沖に出ると強風が吹いている場合もよくあります。潮の流れに関しても素人の方ではわかりづらいので、経験の浅い方は地元の漁師さんや、サーフショップなどで情報を集めてからトライした方がベターでしょうね」
オフショアが強まるこれからの季節は特に注意をしたい。
要注意のインフレータブルボード
そして次にTAKAさんが要因として挙げたのが、“インフレータブルボード”の普及にあるのではないか、ということだ。SUPの種類は大きく分けるとふたつある。ウレタンや発泡スチロールなどの発泡素材をグラスファイバーやカーボンファイバーで覆った表面の固い“ハードボード”と、空気で膨らますことのできる“インフレータブルボード”だ。
近年、インフレータブルボードがよく売れており、ブームの後押しをしている。SUPは3メートル前後ある大きなボードゆえに保管や運搬などに難があるのだが、インフレータブルボードは空気を抜いてしまえばバックパックに収まる大きさになり、ハードボードと比較すると軽さや収納、持ち運びに長けている。また新品のハードボードが20万円以上するのにくらべ、インフレータブルボードは数万円で手に入れることができ、このあたりが人気の理由になっている。