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“ドラ1候補”浅野翔吾(高松商)がスゴいのは「バットが1cm長いから」浅野も松尾汐恩(大阪桐蔭)も愛用するセミオーダーバットの正体

posted2022/09/03 11:00

 
“ドラ1候補”浅野翔吾(高松商)がスゴいのは「バットが1cm長いから」浅野も松尾汐恩(大阪桐蔭)も愛用するセミオーダーバットの正体<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

“ドラ1候補”浅野翔吾(高松商)。今夏の甲子園で3本の本塁打を放ったが、そのバット選びにもこだわりがあった

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中村計

中村計Kei Nakamura

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Nanae Suzuki

 注目のスラッガー2人のバットには、ある共通点があった。また、大阪桐蔭の次期エース左腕は「真っ平ウェブ」にこだわりがあった等々――。甲子園は、野球用具の「パリコレ」、つまり最新野球ギアの品評会でもある。新型コロナの感染拡大がまだ収まらない中、野球用具メーカーも新商品の開発に二の足を踏む傾向が強い。それでも野球専門店・ベースマン立川店の店長で、「道具の違いがわかり過ぎる男」の異名を持つ星徹弥さんの「目」にかかると、この夏の甲子園も、さまざまな最先端用具、トレンドの変化が見られたという。「僕はメーカー側に一切、忖度しませんから」と語る星さんが、野球用具の最前線を“どストレート”に語った(全2回の1回目/#2へ)。

◆◆◆

――まずは、恒例のホームランバットリストから見ていきたいのですが、「Vコング」シリーズを中心としたミズノと、「スカイビート」シリーズを中心としたSSKの2強状態は相変わらず。28本中14本がミズノ、11本がSSKでした。ちなみに今大会の二大注目スラッガー高松商の浅野翔吾選手と、大阪桐蔭の松尾汐恩選手が使っている「ミズノプロ」(表参照)というバットは、どんなバットなのですか。

 じつは奇しくも2人のスラッガーが使っていたのは、セミオーダーバットだったんです。『弘法は筆を選ばず』の逆で、やっぱり一流選手ほど、道具にまでこだわるものなんだなと思いましたね。今、浅野選手と松尾選手の使っていたバットに対する問い合わせがすごい増えています。

――根尾(昂)選手は大阪桐蔭時代、「根尾モデル」と呼ばれる特注のバットを使っていましたが、それとは違うわけですか。

 あれは、ほぼフルオーダーでした。その後、既製品化しましたが、実質、根尾選手がアドバイザリーとしての役割を果たしたようなものだと思います。しかし、浅野選手と松尾選手が使っていたのはセミオーダーです。ヘッドキャップやグリップの形など、いくつかの選択項目があって、その中から自分の好みのものをそれぞれ選ぶんです。松尾選手は、ミズノの売りであるへばりつくような柔らかな打感のものではなく、硬い金属質のバットを使っていましたね。地方大会で彼はいろんなバットを試していたのですが、甲子園にきて、このバットにたどり着いたのだと思います。そこへ行くと、浅野選手のセミオーダーの組み合わせは、ほぼVコング02という既製品のまんまです。なぜ、彼はセミオーダーにしたのか。それは長さなんです。ざっとですが、今、高校生は6割が83センチ、4割が84センチのものを使っています。既製品もほぼ83センチと84センチのモデルしかない。ひと昔前に比べると、かなり短くなりました。近年、変化球の種類が増え、作戦も高度化してきていることから、高校生が操作性の高いバットを好むようになった結果だと思います。そんなトレンドと逆行するように、浅野選手は85センチの金属バットを使っていました。長いバットを選べるという理由だけでセミオーダーしていたんでしょうね。プロ野球選手は85センチか86センチが主流です。木のバットはしなりを利用しないと飛距離が出ないため、どうしてもそれぐらいの長さになる。長くなればなるほど操作するのが難しくなります。でも浅野選手は他の誰よりも、バットを自分の体の一部のように繰っていました。彼がプロでも即戦力だと言われる理由は、こんなところにもあるのだと思います。

「またホームランバットリストかよ」

――この夏は、ヒットの本数も数えたとか。

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