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“あの村上宗隆の弟”に本音で思った「あぁ、もったいない…」「でも野球は上手だわ」190cmの村上慶太…兄の高校時代を知る記者の取材メモ
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安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNanae Suzuki
posted2022/08/24 17:00
![“あの村上宗隆の弟”に本音で思った「あぁ、もったいない…」「でも野球は上手だわ」190cmの村上慶太…兄の高校時代を知る記者の取材メモ<Number Web> photograph by Nanae Suzuki](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/b/4/700/img_b4af2a50298b2853ea8cd37ba855c3a3341564.jpg)
ベスト8まで進んだ九州学院。190cmの村上慶太(3年)は「4番・一塁」で出場した
甲子園での3試合、初球ないしはファーストストライクでかなり甘いボールがあって、思わず「アアーッ(あぶない)!」と声が出たのに、打席の村上慶太、微動だにせず見送り……という、なんとも“もったいない”場面が何度もあった。
ファーストストライクを、果敢にガツンといくというのも、決して簡単なことじゃない。
まず、自分のバッティング能力に自信を持っていないと、絶対にできない。余裕しゃくしゃくなフリをして、1つ目、2つ目のストライクを見逃す打者ほど、バッティングに自信がない。自分がそうだったから、よくわかる。
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最初のストライクがいちばん甘いボール……なんて能書きは耳にタコだろうから、練習法で工夫できるかもしれない。フリーバッティングは「5本4回」とか「10分間打ちっぱなし」という場合が多い。それを、1本打ったら交代で、やって来る「1球」に集中するバッティング練習にするのはどうか。
今のプロ野球には「代打男」という存在はほとんどいなくなったが、かつて、そういう名物男たちは「好球必打の1球勝負」に賭ける腕を磨くため、試合前のバッティング練習でも、交代で「1本打ち」を繰り返して、ジャストミートの精度を研ぎ澄ませていたものだ。
「野球は上手だわ…」
スタンドのみんなが期待したバッティングは、「これからの猛勉強」という印象だったこの夏の村上慶太に、一条の光が見えた場面があった。
一塁を守っていて、ボール回しのスローイングがすごく柔らかく、ぎこちなさが全くなかったことだ。特に、一塁けん制のボールを投手に返す時の、ゆったりとしなやかな腕の振りと、きれいな回転の球道。
「野球は上手だわ……」
今から6年前、九州学院・村上宗隆が「捕手」になったと聞いてから、初めて実戦を見た2年の春の県大会。
どうだろう……と心配しながら見た試合で、捕手としての所作や、二塁送球と投手への返球が、ものすごくサマになっていて、
「うわっ、村上、野球上手いわ……」
同じことをつぶやいていたのを思い出す。「野球上手」……そのDNAは、少なくとも、兄弟の間に共有されている。
◆◆◆
「4番・村上慶太」に正直驚いたこの夏の甲子園。選手の使い方はチームのことだから、知らない者が口を挟んではいけない。
ただ、「7番・村上慶太」ぐらいで試合に臨んでいたら……そんな妄想が今もついてまわる。
高校に入った4月のあたまから4番、クリーンナップだった兄と、高校野球最後の半年で「4番」と格闘した弟。そもそものスタートラインが違う。大学、社会人野球……時間をかけて、コツコツと辛抱強く積み上げた弟の努力が、25歳ぐらいで大輪の華を咲かせる頃、歳も30にさしかかり、油の乗りきった兄は、その精度とパワーを兼備したたぐいまれな剛打で、きっと海の向こうのどこかのスタジアムを、やんやと沸かせていることだろう。
近未来の村上兄弟に思いをめぐらせた時、私の妄想はこんな感じで広がっていく。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。
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