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“あの村上宗隆の弟”に本音で思った「あぁ、もったいない…」「でも野球は上手だわ」190cmの村上慶太…兄の高校時代を知る記者の取材メモ

posted2022/08/24 17:00

 
“あの村上宗隆の弟”に本音で思った「あぁ、もったいない…」「でも野球は上手だわ」190cmの村上慶太…兄の高校時代を知る記者の取材メモ<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

ベスト8まで進んだ九州学院。190cmの村上慶太(3年)は「4番・一塁」で出場した

text by

安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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Nanae Suzuki

 もうずいぶん前の記憶だが、九州学院時代の村上宗隆選手(現・ヤクルト)を何度目かの取材で伺った時のことだ。

 グラウンドのネットに向かって、ティーバッティングにうち込む……まさに、一心に打ち込んでいる村上宗隆がいた。その鬼気迫るような姿に、茫然としながら見つめる私がいて、その時、どなたかが声をかけてくれた。

「あ、今日は弟くんが見に来てますね」

 当時、野球部長で、この夏の甲子園には就任2年目の監督として出場された平井誠也先生だったか……少し記憶が曖昧なのだが、グラウンドを囲むネットの裏に、少年が1人。こちらのほうを見ている。

「弟くんだってさ……」

 脇目も振らずにバットを振っている村上宗隆の大きな背中に、控えめに声をかけた。すると顔だけちょっとそちらに向けて、チラッと視線を向けただけで、再びボールとバットと自分だけの「世界」に戻って、ティーバッティングを繰り返す。その姿に、「狂気」のようなものを感じたものだった。

 もっとちゃんと記憶の中に刻み付けておけばよかったのだが、まさか、兄・村上宗隆がここまでの「傑物」になるとはあの頃思っていない。弟・村上慶太についても、「あの村上の弟」ということで、これほど騒ぎになるなんて、夢にも思わなかった。

 こうなるとわかっていたら、当時まだ小6か中1だったはずの慶太少年をつかまえて、もっとあれこれ訊いてみればよかった……と、今ごろ残念がってみても、もう遅い。

村上慶太も荷が重かったのでは?

 数少ない目玉選手や人気チーム、強豪校が早々に姿を消してしまったこの夏の甲子園。

 ベスト8に勝ち進んだ九州学院の4番打者・村上慶太(3年)の注目度が俄然上がった。

 初戦で帝京五(愛媛)を14対4の大差で破り、2戦目の国学院栃木戦では、2年生エース・直江新投手が4安打完封の快投。ベスト8に勝ち進んだ準々決勝こそ聖光学院(福島)に敗れたものの、村上慶太は3試合で12打数3安打1打点。本人にとっては不本意だったかもしれないが、見る者からすれば、春からの成長が伝わってきた「甲子園」だった。

 とはいえ、「村上宗隆の弟」は事実だから構わないとして、だから「村上宗隆二世」のごとく報道するのは、ちょっと早いようだ。ほんとのところ、村上慶太本人にとっても、いささか荷が重かったのではないか。この夏の3試合、打席に立った時の表情がチャンスの場面ほど、つらそうに見えた。

188cmの兄と190cmの弟「ミートポイントを捕手寄りに…」

 3試合のバッティングを見て、こうしたらお兄さんに近づけるのでは……と思えることが、いくつかあった。

 ミートポイントを捕手寄りに近づけてみてはどうか……と、まず思う。

【次ページ】 188cmの兄と190cmの弟「ミートポイントを捕手寄りに…」

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