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「カウンターが答えではない」日本代表を観察し続けたトルシエが授けるカタールW杯ベスト8への秘策とは
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2022/08/03 11:03
ブラジル戦の日本代表の戦いを見届け、トルシエは「方向性を変える必要はない」と断言した
――あなたが指摘する日本の特徴である一体感や統一感は、日本がドイツやスペインと戦うにあたっても武器になるのでしょうか?
「戦術的により傲慢になれる限りにおいてそうだ」
――傲慢というと……。
「相手を躊躇うことなく走らせ、ドイツと同等のレベルにあることを忌憚なく示すことだ。彼ら相手に自信に溢れるプレーを披露し、まったく恐れていないことを存分に示す。日本はボールを保持して、25本のパスをつなげることができる。相手を走らせることもできる。日本はより挑発的で大胆なパーソナリティを見せるべきだ。それが可能であるのだから。
繰り返すがすべての要素——フィジカルもテクニックも経験も、日本は世界のトップと同じレベルにあるし、世界のトップ20の中に入っている。W杯でベスト8に入る力を十分に持っている。準々決勝に進めるすべての要素を備えている。
もちろんグループリーグ突破は簡単ではない。ドイツもスペインも難敵だ。しかし日本はこのW杯で、戦術的にも相手と同等に戦えること、相手を挑発できることを見せられる。それが私の考えた解決策だ。しっかり守って素早くカウンターを仕掛けるのが答えではない。戦う武器としては、それだけでは不十分だ。もっと別のものも見せるべきだ。
足りないのは戦術
ブラジル戦で明らかになったのは、日本はフィジカル面でもメンタル面でもブラジルと戦えることだ。しかし戦術面ではもっと忍耐強く戦うこともできたし、相手を不安に陥れることも、走らせることもできた。彼らを動かして組織に綻びを生じさせるために、そして伊東や三笘、浅野らのスピードを生かすために、より戦略的な戦い方をすべきだった。ブラジル戦の攻撃は簡単に予測ができるしナイーブだった。カウンターアタックだけではドイツには勝てない。たしかに1点は取れるだろう。しかし相手を不安に陥れるためにはもっとじっくりプレーする必要がある」
――最後の質問です。さきほど高原については今のチームで何ができるかあなたは語りましたが、中田英寿はどうでしょうか。当時の中田はカリスマ性でもパーソナリティでも個の力でもレベルを超えていました。個人主義者でもありましたが、彼のようなタイプは今のチームにはいません。中田は今の森保のチームにも有効な人材なのか、そして森保のチームでプレーができるのでしょうか?