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「ワタルはマシーンみたいだった」ブッフバルトが語る、遠藤航がシュツットガルトで“愛される”理由〈浦和時代の思い出も〉
posted2022/08/04 06:00
text by
円賀貴子Takako Maruga
photograph by
Getty Images
2022年5月14日、ドイツ・ブンデスリーガ2021-2022年シーズン最終節のケルン戦。アディショナルタイムに劇的ヘディングシュートを決めてチームを降格から救ったMF遠藤航(29歳)は、VfBシュツットガルトの「レジェンド」となった。
ことの重大さに気づいたのは、同チーム所属のDF伊藤洋輝(23歳)について話を聞こうと地元記者たちに電話をしてからだった。「伊藤もいいけど、遠藤の話は書いたの? シュツットガルトでは『LEG“ENDO”』って呼ばれているんだからさ」と諭され、「遠藤はもう聖人認定された」と聞き、教会の祭壇画の中でキリストを前に跪く、聖人姿の遠藤航を想像してしまった。
これはただごとではない……ということで、同じくシュツットガルトのレジェンドであるギド・ブッフバルト氏(61歳)に電話をかけた。
「ほとんどマシーンみたいに(笑)」
――遠藤航選手がレジェンドの仲間入りしたことについて、ブッフバルトさんはどう思われますか?
ギド・ブッフバルト(以下、ギド) 航はキャプテンであり、リーダーとして1シーズンを通してずっと、6番(守備的MF)、時には8番(攻撃的MF)として非常に良いプレーを続けてきていた。守備はもちろん、時に前へ出て行ってね。
さらに航は、日本代表としても活躍した。日本やアジア諸国への長い移動があるにも関わらず、シュツットガルトに戻ってくるとすぐにまた毎試合出場している。そこでしっかりとしたパフォーマンスを見せ、(出場時間を)1分たりとも逃さなかった。昨シーズンはいったい何試合したんだろう……ほとんどマシーンみたいに(笑)、常に良いパフォーマンスを見せた。それがシュツットガルトで高く評価されていると思う。
そして、最後の最後にシュツットガルトが1部残留を決めるあの決勝点を決めた。チームとしてはシーズン通して良くない展開が続いていたから、それがシュツットガルトを歓喜と熱狂に包み込ませることになった。
――あの試合はご家族とご覧になったのですか?
ギド いや、スタジアムにいた。というのもちょうど、ブンデスリーガ優勝30周年でね。私たちは1992年5月にリーグ優勝を成し遂げたのだけど、あの試合で航たちはその時のデザインを再現したユニフォームを着てプレーしたんだ。1万枚売れたから、それを着ているファンたちも多かったよ。降格しないように、幸運を呼ぶお守りみたいな意味もあったと思う。
――そのお守りが効果を発揮しましたね。
ギド そうみたいだね(笑)。スタンドでは30年前の優勝メンバーみんなで観戦していたんだ。私の隣には当時マネジャーだったディーター・へーネス(バイエルン前会長のウリ・へーネスの弟)が座っていて、みんな大喜びだった。