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サポーターの「またか」を“いい意味で裏切った”サウジ戦快勝の要因とは? 日本代表に浸透しつつある森保監督の「連携、連動」
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2022/02/02 17:02
伊東純也は持ち前の走力で先制ゴールをアシストし、後半には自ら強烈なシュートを突き刺した
チーム全体に浸透しつつある「連携、連動」
右サイドの伊東が得点を重ねているなかで、南野は葛藤を抱えていたはずである。昨年10月のサウジ戦から中国戦まで5試合連続で先発してきたが、得点は記録していなかった。中国戦では相手選手ともみ合う場面があった。大一番での最終予選初ゴールは、心のなかの靄を吹き飛ばす一撃だったのだ。
後半開始直後の50分にあげた2点目も、きっかけを作ったのは左サイドだった。タッチライン際から内側へスライドした南野が長友を使うと、左サイドで高い位置を取る背番号5から伊東へパスがつながる。背番号14はペナルティアーク右から、ゴール左上へ強烈なボレーを突き刺した。
直後にベンチ前で広がった光景が、この試合に賭けるチームの思いを表していた。サブメンバーを含めた歓喜の輪が広がったのだ。勝利してもなおチームに不安や不満を囁かれるなかで、チーム全体が一体感を持っていたことが分かる。同じ相手に連敗するわけにはいかない、という思いも重なっていただろう。他でもない選手たち自身が、サウジ撃破に並々ならぬ闘志を燃やしていたのだ。
81分には追加点の好機を生み出す。酒井が右サイドから持ち出し、伊東、守田英正、前田大然とワンタッチでパスがつながり、ボールは右サイドを抜け出した酒井へつながる。ゴール前へのクロスに浅野拓磨が飛び込むが、GKと交錯しながらのシュートはバーを越えていった。
途中出場の前田と浅野も関わったスムーズな崩しは、「連携、連動」がチーム全体へ広がっていることを示す。今回はホームの連戦だったために、いつもより練習を積むことができた。そのうえで言えば、東京五輪が開催された昨夏まで1チーム2カテゴリーで強化してきたことも、ここにきて価値を持っている。
前田はフル代表でのプレーが19年のコパ・アメリカ以来だったが、中国戦からイメージを共有できていた。2試合連続でCBを務めた板倉滉も、5月のミャンマー戦を最後に日本代表のピッチに立っていなかったが、東京五輪で酒井や遠藤、田中碧らとともにプレーしている。1チーム2カテゴリーの強化によって、選手同士を結びつける「線」が増えていったのは間違いない。共通理解の土台がしっかりとしている。