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「10回やったら3回は勝てる」5部のクラブが天皇杯でJ1広島に快勝…サッカー未経験の分析官が語る“おこしやすの奇跡”の裏側
text by
澤田将太Shota Sawada
photograph bySports X
posted2021/12/21 17:01
Jリーグ加盟を目指すおこしやす京都ACで、分析官を務める龍岡歩。サッカー未経験という異色のキャリアが注目を集めている
「チームとしてももちろんですが、選手個人が上を目指すという前提で地域リーグは成り立っています。上手い選手がプロを目指して階段を登っていくのは当然のことなので、どんどん行ってくれって思いですね。トップのチームだと同じユニフォームで戦い続けるバンディエラ(旗頭)と呼ばれる選手がいますが、このカテゴリーでそんな選手がいたら『上を目指す気ないの?』ってなってしまいます(笑)」
日本にもジェイミー・バーディーは生まれるのか?
元イングランド代表FWのジェイミー・バーディー(レスター)は、7部相当のリーグからステップアップしたことで知られている。また直近でも、6部相当のリーグでキャリアを積んだオリー・ワトキンス(アストンビラ)がイングランド代表に選出されるなど、下位リーグから一気にトップへと上り詰めた選手は少なくない。龍岡は、日本でもそういった選手が増えていくと睨んでいる。
「バーディーはほんの数年で7部から1部に行きましたけど、実力が急に伸びたかというと、そうではないと思うんです。サッカーって難しいもので、環境、チームメイト、戦術が噛み合って初めて実力が発揮されることがある。おそらくイングランドなどの欧州の下位リーグには、バーディーのように素質を持ったまま埋もれている選手が100人単位で存在するはずです。
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日本でも、地域リーグから素質と環境が噛み合って一気に駆け上がっていく選手がチラホラ出てきています。広島戦でも示せましたが、1部と5部、プロとノンプロの間でも、一般的なイメージほど大きな差はないんですよ。逆に少し前までJ1やJ2でバリバリやっていたのに、地域リーグで苦戦している選手もたくさんいますから」
日本でトップリーグまで“個人昇格”を果たした選手というと、現在サガン鳥栖の正GKを務める朴一圭が思い浮かぶ。朴は、おこしやす京都ACと同じ5部相当の関東1部リーグから、龍岡がいた藤枝MYFCを経由し、2019年には横浜F・マリノスの正GKとしてJ1優勝を成し遂げている。
「当時の藤枝はGKも含めてパスを回すサッカーを目指していました。通常GKがパスミスをして失点したら激怒されると思うのですが、J3には降格がないため、その後のFC琉球時代も含めて朴は伸び伸びと足元の技術を磨くことができた。それがJ1のマリノスが求めるGK像と合致し、一気に抜擢されたというワケです。まさに実力と戦術が噛み合って駆け上がっていった好例ですね。移籍後にゼロからそのクラブのサッカーを学ぶより、元から似た戦術のチームに行く方が合理的なんです」