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《天皇杯でジャイアントキリング》サッカー素人の“戦術ブロガー”がプロの分析官になれた理由「プレーが下手でも役割はある」

posted2021/12/21 17:02

 
《天皇杯でジャイアントキリング》サッカー素人の“戦術ブロガー”がプロの分析官になれた理由「プレーが下手でも役割はある」<Number Web> photograph by Sports X

ブログをきっかけに藤枝MYFCの分析官に抜擢された龍岡歩(現おこしやす京都AC)。9年間にわたる海外放浪の経験が分析官としての素地を作ったという

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澤田将太

澤田将太Shota Sawada

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Sports X

今年の天皇杯でサンフレッチェ広島を破り、見事にジャイアントキリングを達成したおこしやす京都ACは、関西1部リーグに所属する社会人クラブだ。同クラブで分析官を務める“サッカー店長”こと龍岡歩は、サッカー未経験でJリーグクラブからスカウトされたという特異な経歴を持っている。龍岡はどんな人生を歩み、サッカーを仕事にしたのだろうか? また、“素人”がサッカー界で活躍することは可能なのだろうか?(全2回の2回目/前編へ)

「小さいころにサッカーにハマってからは、年間1000試合くらい見るような生活を送っていました。でも、運動神経は悪かったので、部活動の類はなにもしていません。高校卒業まで、ただひたすらサッカーを見る毎日でした」

 高校卒業後、龍岡は約20カ国をめぐるサッカー放浪の旅に出た。しかしそれは、コーチや監督を目指すといった自身のキャリアのためではなく、ただただサッカーを見るためだけ。仕事としてサッカーに携わることができるとは、当時はまったく思っていなかったという。

「サッカー放浪の旅とは言っても、いわゆるフリーターですよ。アルバイトをしてお金を貯めて、海外にサッカーを見にいく。観光ビザなので、だいたい2週間から最長でも2カ月くらいですね。食費や生活費を極限まで削ってお金のほとんどをサッカーに注ぎ込んでいました。だいたい9年間くらいです。どうかしていますよね(笑)」

 サッカーが好き。それだけの思いで貧乏旅行を繰り返した。しかも英語を話すことができず、身振り手振りと簡単な英単語だけでコミュニケーションをとっていたという。

南米で危険を冒して体得した“戦術観”

「ヨーロッパによく行っていたのですが、『サッカー好きなら南米も見なきゃダメだろ』ということで、この生活の集大成として南米を2カ月かけて縦断したんです。アルゼンチンの最南端の南極の入り口からベネズエラまで。危険な思いはたくさんしました(笑)。そういう生活をしていると『あ、これ以上行くと危ないな』っていうのが感覚でわかるようになるんです。危ない場所も見ないとその国の風土やサッカーが本当の意味では理解できないので、ギリギリまで攻めていきました(笑)。

 一番ヒヤヒヤしたのは、ブラジルの歌舞伎町みたいな繁華街で入ったサッカーバーですね。美女が『奢ってほしい』って話しかけてきて、一杯300円くらいだったので気前よく奢ったのですが、気がつくとブラジル代表のセンターバックみたいな男たちに囲まれていました。見事にぼったくられましたね。それでもブラジルは物価が安いので、1万5000円くらいなんですが……」

【次ページ】 身振り手振りとカタコトの英語で嘘をついた

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