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「10回やったら3回は勝てる」5部のクラブが天皇杯でJ1広島に快勝…サッカー未経験の分析官が語る“おこしやすの奇跡”の裏側

posted2021/12/21 17:01

 
「10回やったら3回は勝てる」5部のクラブが天皇杯でJ1広島に快勝…サッカー未経験の分析官が語る“おこしやすの奇跡”の裏側<Number Web> photograph by Sports X

Jリーグ加盟を目指すおこしやす京都ACで、分析官を務める龍岡歩。サッカー未経験という異色のキャリアが注目を集めている

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澤田将太

澤田将太Shota Sawada

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Sports X

2021年、日本サッカー界最大のジャイアントキリングは、天皇杯2回戦で起きた“おこしやすの奇跡”だった。関西1部リーグ所属のおこしやす京都ACが、J1の強豪サンフレッチェ広島を5対1で破ったのだ。その舞台裏には、「まともにボールを蹴ったことがない」と語るサッカー未経験の分析官がいた。(全2回の1回目/後編へ)

 学生時代、部活に所属していなかった“サッカー店長”こと龍岡歩は、サッカーを見ることに多くの時間を費やした。高校卒業後は、9年間の海外放浪を経てサッカーショップに就職。並行して書いていた戦術ブログが関係者の目に留まり、サッカー素人でありながらJ3の藤枝MYFCに分析官として加入することなる。その後、おこしやす京都ACに活躍の場を移した龍岡は、先述したジャイアントキリングの当事者となった。

「試合前に『この試合勝てるよ』って言ったら、チームのみんなに笑われました(笑)。監督ですら10回に1回でも勝てたら良い方だと思っていたみたいなのですが、僕は10回やったら3回くらいはいけるかな、と思っていた。もちろん天皇杯という特殊な大会、特殊な日程、あらゆる条件がすべて整ったうえでの10分の3ですが」

「局地戦なら面白くなる」J1クラブの攻略法とは?

 おこしやす京都ACは、J1から数えて5番目のリーグにあたる関西1部リーグに属する。トップリーグに所属するサンフレッチェ広島とは、選手、練習環境、予算、人気など、ありとあらゆる面でレベルが違う。それでも龍岡には、勝つ自信があった。

「実はJ3の藤枝のときも、J1の清水エスパルスに4対2で勝ったことがあるんですよ。その経験が活きました。J1の多くのクラブは、週末に試合を終えた次の週の水曜日(ミッドウィーク)に天皇杯の初戦を戦います。ウチとやった広島さんは、体力的にキツい中2日という日程でした。J1の試合とおこしやす京都との試合、どっちで選手を休ませると言ったら、それは当然ウチになりますよね。なので、まずどれくらいメンバーを落としてくるかの想定から始めました」

 厳しい日程を乗り切るため、スタメンを大幅に入れ替えるターンオーバー制がサッカー界に根付いて久しい。現に多くのJ1クラブが、天皇杯で格下と試合をする際にはメンバーを落としている。しかし、多くの選手を抱えるJ1クラブのメンバーを想定するのは至難の業だ。それでも龍岡はスタメン予想をほぼ的中させ、プラン通りの“大量得点”で勝利する。

「ひと月前に広島さんは、同じ週中で行われるルヴァンカップを戦っていました。そこでどういうスタメンを組んだのか、交代パターン、リードしているとき、されているときの采配の傾向を全て調べたんです。さらにウチが格下ということを踏まえて、11人中9人まではスタメンを当てることが出来ました。当然、情報の多い広島さんに比べて、こちらのデータを相手があまり持っていないということも優位に働きました」

【次ページ】 謎に包まれた「分析官の仕事」を解説

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