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「真っ先に思いつくのはジダン。メッシとロナウドは当然で…」 名手アイマールが認める“天才”と“戦術時代”にこそ必要なもの
text by
セルヒオ・レビンスキー&マリロ・バレラSergio Levinsky & Marirró Varela
photograph byAFLO
posted2021/12/22 11:04
2005年、アイマールとジダンのマッチアップ。当時のリーガは名手が揃っていた
「ええ、私はそう思っています。もちろん、テクノロジーの進化や各分野の研究が進んだことで、より有効なフィジカルトレーニングや食事が広く実践されるようになり、選手のコンディションは以前より高く保たれるようになりました。
また戦術にも変遷はありますが、結局のところ、選手の良し悪しの基準は普遍的なものが多い。心身の強さや能力、ボールを扱う技術、判断力といったものです。なかでも、やはりテクニックがもっとも重要だと私は考えます。幸運なことに、フットボールの世界では、私たちを楽しませてくれる素晴らしい技術を持つ選手が次々に現れています」
──5レーン理論や即時奪回など、戦術性が増すなか、スキルフルな選手はこれからも生きていけるでしょうか?
「当然です。逆にスキルのない選手こそ、生きていけなくなるでしょう。フットボールは足でボールを扱う競技です。そこには自ずと、技術的な差異が生まれてくる。どれだけ運動能力が高くても、ボールをうまく扱えないのであれば、ほかの競技をした方がいい。メッシを見れば、それは一目瞭然です。小柄でも技術が極めて高ければ、高度な戦術で訓練された大きな相手でも、止めることはできない。それがフットボールです」
だからこそ、そうした経験が重要だと
──あなたも母国のリーベルプレートからスペインのバレンシアに移った時、戦術や文化の違いに直面したと思います。
「その通りです。ただ、だからこそ、そうした経験が重要だと私は考えます。自分が慣れ親しんだものとは異なる環境に身を置き、さまざまな困難に直面し、それを乗り越えるために自ら考えて武器を拵える。そうしたプロセスは必ず、後の自分の糧となりますから。また、そこには世界中から集まった選手たちがいて、彼らと接することによって、視野が広くなり、人間としての幅と深みが増します。
外国で生活することにも当然、向き不向きはあると思いますが、異文化に触れ、異国の人とコミュニケーションをすることによって、得られるものは大きい。私自身、ヨーロッパやアジア(※2014年にマレーシアのジョホール・ダルル・タクジムに所属)でプレーし、生活したことによって、自分の人生が豊かになったと感じています」
──しかしあの頃のバレンシアは、守備的な戦術を志向していて、あなたの能力が生かしにくい状況でもあったような覚えがあります。
「そうかもしれませんね。ただその前に、アルゼンチンからスペインのリーグに移るだけでも、大きな違いがありました。好みは別として、自分の知らなかった戦術を体得したり、難しい状況を乗り越えたりすれば、充実感や達成感を味わえます。そうした姿勢は、フットボーラーとしてだけでなく、人間としても誇れる美徳だと私は思います」<第1回、第2回から続く>