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史上最多191ゴールでも「悔しい思いはずっと残る」 大久保嘉人の“ヨシメーター”はもう一度動くのか《J1ラストゲームへ》 

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いしかわごう

いしかわごうGo Ishikawa

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2021/12/03 17:05

史上最多191ゴールでも「悔しい思いはずっと残る」 大久保嘉人の“ヨシメーター”はもう一度動くのか《J1ラストゲームへ》<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

ゴールを決めて雄叫びをあげる川崎フロンターレ時代の大久保嘉人。自身を奮い立たせるために、試合後は感情をむき出しにしていた

「人のために動くと、自分にボールが転がってくる」

 ゴールから逆算した組み立てと駆け引きの巧さは、少年時代から磨いてきたものだろう。ただキャリアの転換期となった川崎時代におけるプレースタイルの変化を挙げるならば、「相手に掴まらない動き」を身につけた点にある。

 ゴール前での大久保を観察していると、いとも簡単にマークを外してゴールを量産しているように見えたものだ。敵と味方が密集しているペナルティエリア内でフリーになれるのは、もちろん簡単ではない。この「掴まらない動き」は指揮していた風間八宏監督がストライカーに求めている技術でもあったのだが、当時の指揮官はこう述べていた。

「自分の考えるゴール前というのは、『掴まらないもの』だから。日本人のほうが俊敏性はある。強い選手も必要だけど、それよりも速くて巧い奴。海外では誰も嘉人をセンターFWでは使わなかったじゃない? 相手と当たるというところから始まっているんだろう。でも自分たちはそうじゃない。相手には当たらなくちゃいけないと、いつ決まったの? と思ってやっているから」

 ゴール前だからといって、必ずしも相手に身体をぶつけながら競り合う必要はないというのが風間監督の持論だった。ワントップに起用された大久保は、相手の動きを見て逆を取った動きで一瞬にしてフリーになり、鼻先で触ってゴールに結びつける。屈強なDF陣と身体をぶつけてゴールを決める必要もなかった。チャンスを周りが作ってくれるのだから、ゴール前で待っていれば良い。むしろ、真ん中からあまり動き過ぎないようにと指揮官は指示していたほどだ。

 だから、なのだろう。

 ある時の大久保は、ゴールの秘訣をこんな風に話してくれたこともある。

「自分のゴールが欲しいときほど、そこで『自分が、自分が』となるんじゃなくて、みんながうまく回るように意識してやる。人のために動くと、良いところで自分にボールが転がってくるんだよね」

【次ページ】 誰よりも悔しさと向き合うストライカー

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