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バルサには“疲労回復用のピザ”が…選手寿命を伸ばしパフォーマンスを最大化するフットボーラーのための《最高の食事》とは
posted2021/11/23 17:00
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フランス・フットボール誌France Football
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L’Équipe
身体を作りあげていくうえで、また体調を維持し長く現役生活を続けるためにどんな食生活を送ればいいのか。食事への配慮、食事の比重の増大は、今日のスポーツ界ではますます顕著になっている。『フランス・フットボール』誌7月10日発売号では、ジェレミー・ドクトゥール記者が、サッカー選手と食事の関係をレポートしている。
思い起こせばティム・ブレッドバリー(香港代表)は、試合のあとパブでビールを飲みながら私の取材に応じた。日本代表のある主力選手たちは、やはり試合のあと広島のお好み村で栄養補給の夜食を摂っていた。いずれも1990年代のことである。いったい何がどう変わったのか。ドクトゥール記者が伝える。(肩書や年齢などは『フランス・フットボール』誌掲載当時のままです)
(田村修一)
何を食べたか言ってくれ。そうすれば君にどうプレーしたらいいか教えられる。
プロの世界では、食事の占める割合が以前に比べずっと大きくなり、創意工夫に富んだ栄養士が選手の食事を観察している。
「文化は変わった。今は誰も酒を積極的に飲もうとは思わない。試合前日にケーキをひとつ食べるのは推奨されても、ビールを7杯も飲んだりそれを毎日のように続けるのは選手生命を縮めるだけだ」
そう語るのは、2017~20年にアーセナルで栄養士を務めたリチャード・アリソンである。イングランドではブライアン・クラフのノッティンガム・フォレストが、移動のバスの中にビールを持ち込んだ1970~80年代から習慣が変化した。当時の選手たちは、好きなときに好きなものを食べていた。
名将ベンゲルがもたらしたフットボーラーの食事改革
変革は1996年9月にもたらされた。アーセナルの監督に就任したアーセン・ベンゲルが、それまでの風習を断ち切ったのだった。就任当初はほとんど名前を知られていなかったイングランドで、《Arsène who ?=アーセンって誰?》と呼ばれた革新的な改革を断行したベンゲルは、選手たちの食習慣も大きく変えた。今日ではほとんどのクラブが、専属の栄養士を雇い入れて選手たちの体調管理に細心の注意を払っている。
情報分析家や心理学者、スポーツ科学者、その他あらゆるモダンなポストに従事するスタッフたちと同様に、食事のエキスパートも選手生活のあらゆる局面に介入する。論理はいたってシンプルで、《よりよいパフォーマンスを実現するために食事を改善する》である。ゲータレード・スポーツ・サイエンス・インスティテュート(GSSI)のメンバーであり、主にマンチェスター・シティとバルセロナのために働いているイアン・ロロは語る。
「適切な食生活を送り続ければ、より長く現役を続けられることは今ではよく知られている」
長く輝かしい未来が開けていると信じている若手よりも、あと数年間現役生活を延ばしたいと願うベテランにとって、これは切実な問題である。そこから栄養士と選手の親密な関係構築の必要性が生まれる。あくまでも関係が個別であるのは、それぞれの事情やモチベーションが異なっているからである。