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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「なぜ三笘薫は警戒されてもボールを受けられるのか」元チームメイトの中村憲剛が徹底解説 ポイントは「立ち位置のイヤらしさ」
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2021/11/18 17:02
オマーンの選手に囲まれながらボールを受ける三笘薫。川崎フロンターレでともにプレーした中村憲剛氏は「立ち位置の絶妙さ」を指摘する
「この選手は危ない」三笘の投入で警報発令
後半開始から、森保一監督は柴崎に代えて三笘薫を起用しました。森保監督への個人的な印象からすると、このタイミングで出場させるとは予想していませんでした。代えるとしても後半途中からではと考えていたので、前半の戦い方に思うところがあったのかもしれません。
その三笘ですが、期待通りのプレーを見せてくれました。全国のサッカーファンが彼の出場を待っていたなかで、最終予選中盤の大一番が国際Aマッチデビュー戦。非常にプレッシャーのかかる難しいシチュエーションで、普段通りのプレーができなくてもおかしくないところですが、ファーストプレーからいきなりドリブルで仕掛けて直接FKを獲得しました。あのプレーに彼の強烈な意志を感じましたし、前半にはなかったプレーでしたから、一気に躍動感が出たと思います。
あのワンプレーで、ピッチ上は東京五輪の3位決定戦と同じ色合いになりました。メキシコが三笘にクギ付けにされたように、オマーンにも警報が発令されたのです。「この選手は危ない」と。
そして、左の三笘、右の伊東が高い位置で幅を取ることで、コンパクトに規律正しく築かれていたオマーンの守備がジワジワと広がっていきました。三笘に1人で対峙するのは危険なので、オマーンは2人いきます。そうすると、周りが空く。
ここで、なぜ三笘は警戒されてもボールを受けられるのかを、自分なりの解釈で説明したいと思います。
あのドリブルを見せたあとに、彼はとてもイヤらしい立ち位置を取りました。左サイドの一番前ではなく、ちょっと落ちたところ、右サイドバックが微妙に届かない、マークをしきれないタッチライン際に。仕掛けられると怖いギリギリのラインに立ち、ボールが入ったら仕掛ける。相手とは距離があるのでスピードに乗りやすく、1対1で勝ちやすい。
相手サイドバックはあのドリブルを体感したので、間を空けたくない心情が生まれます。迫力を持って寄せていくのですが、三笘はその迫力を利用して今度は相手の背後のスペースへ走り、そこで受けて勝負をする。足元と背後へのランというふたつの駆け引きができることで、相手からすると「いったら裏を狙われるし、いかないと仕掛けられる」となります。守備側は選択肢が増えたので、その時点で後手を踏んでいるのです。<後編へ続く>
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