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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「なぜ三笘薫は警戒されてもボールを受けられるのか」元チームメイトの中村憲剛が徹底解説 ポイントは「立ち位置のイヤらしさ」
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2021/11/18 17:02
オマーンの選手に囲まれながらボールを受ける三笘薫。川崎フロンターレでともにプレーした中村憲剛氏は「立ち位置の絶妙さ」を指摘する
その理由には、相手の守備時のシステムと、日本の選手たちのプレースタイルやタイプがあげられます。4-3-3が初めて採用された10月のオーストラリア戦では、左サイドでローリングと呼ばれる動きが成立していました。守備時のシステムが4-4-2の相手に対して、サイドバックの長友佑都が高い位置を取り、ウイングの南野拓実が外から中へ入って、インサイドハーフを含めた3人が三角形をうまく作ることで、相手のマークを困らせるポジショニングがとても効果的でした。4-4-2のゾーンディフェンスに、ローリングはマークのずれを生みやすいので効果絶大です。
また、南野はウイングよりも中に入ってプレーするほうが特徴を発揮でき、長友も前にスペースがあるほうがオーバーラップできる。それぞれのプレースタイルに基づいたコンビとしての相性は、決して悪くないと思います。
ただ、ベトナムは5-3-2、オマーンは4-3-1-2でした。オーストラリアのようなゾーン間の隙間は、なかなかできないシステムでした。オーストラリア戦のイメージを持って臨むと、使いたいスペースに相手の選手が配置されているので、難しかったと思います。
ベトナム戦でも見られた「距離感が良すぎる」問題
そういう意味では、今回の2試合はオーストラリア戦の成功体験にとらわれすぎていたのかもしれません。南野は中へ入るのが早く、長友もそれに合わせて上がるので、ベトナム戦では守田が、オマーン戦では田中が、同じレーンに入らないように左に出る形が多くなりました。ローリングはタイミングが良ければ効果的ですが、最初から「ローリング済み」のポジションを取ってしまうと、相手を困らせることはできません。
それでも、長友が1対1で勝てばクロスまで持っていけます。オマーン戦の前半に、伊東純也のシュートを導いたクロスがありました。ああいう形を多く作ることが望まれたのですが、タイミングよくローリングしないと高い位置を取ることは難しく、ローリング済みのポジションを早い段階で取ってしまうと、ボールを受けるのが相手陣内タッチライン側の真ん中あたりになります。仕掛けるにはまだ早いエリアです。
とくに前半は相手のスライドが速かったので、ボールを受けた時にパスを出すコースが少なくなり、バックパスや横パスが多くなったことで攻撃が少し停滞してしまいました。自分たちがやりたいことを優先したことで、相手のポジショニングにハマる形になり、相手を困らせることができていなかったのです。